コラム

 公開日: 2013-06-18 

民法と税法 1 通謀虚偽表示

1 民法の場合
民法94条1項は「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と規定し、2項は「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定しております。
例えば、甲と乙が、通謀して、甲所有の不動産を、乙に譲渡する意思もないのに、乙に所有権を移転する登記手続をした場合、乙は有効にその不動産を取得することはありません。これが民法94条1項の意味です。
しかしながら、乙がその不動産を自己の名義になっていることを幸いとして、丙に売り、丙に所有権移転登記手続をしてしまうと、丙が善意の場合(乙が所有者でないことをしらなかった場合)は、丙はその所有権を取得します。これが民法94条2項の意味です。

2 税法の場合
通謀虚偽表示により甲から乙に不動産の所有権移転登記手続がなされた場合、所有権移転の効果は生じないので、譲渡所得税は生じず、また不動産取得税も発生しません(東京地裁平成3.5.28判決)。この理は税務署にも主張できます。この点が民法と違うところです(民法94条2項が適用されると、税務署には無効の主張はできないことになりますが、税法は、私人間の利益の調整のためでなく、真実に課税するものですので、法的に無効なものは税務署にも無効を主張しうるのです。)。所得税法12条で「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」と定めているとおりです。これを『実質所得者課税の原則』あるいは『実質課税の原則』といいます。法人税法(11条)等他の税法にも同じ規定が置かれています。

3 名義変更と贈与税
相続税基本通達9-9は「不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする(昭39直審(資)22改正)とされて贈与税が課税されることになりますが、これが通謀虚偽表示であるときは、贈与税は課税されません。そこで、名義変更があったとき、それが通謀虚偽表示によるものであるかどうかの認定が問題になりますが、その基準について、相続税の個別通達で細かな規定が置かれています。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
遺産分割の場合の注意 「課税価格」イコール「相続税評価額」ではないこと

1 遺産の評価問題遺産分割の調停の席で,遺産(相続財産)の評価をどうするかという問題が提起されることがあ...

[ 相続相談 ]

遺留分減殺請求事件と相続税の処理

1 遺留分減殺請求をして,相続財産の一部の返還又は価額弁償金の支払を受けた遺留分権利者甲の場合これによっ...

[ 相続相談 ]

情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ