コラム

 公開日: 2013-06-07  最終更新日: 2013-06-11

商取引 5 不安の抗弁

1意味
不安の抗弁とは、継続的な取引をしている場合において、取引の相手方に、倒産や支払い停止の恐れを感じた場合に、それを理由に、先履行になる債務の支払いを停止することをいいます。
例えば、継続的な売買契約を結んで、売主が買主に、商品を販売しているとき、買主が支払い停止をしそうであるというような状況にある場合、売主としては、もし、買主が倒産をすれば、弁済期前の売掛債権はむろんのこと、今後販売する商品の代金も支払ってもらえないことになるので、リスクを最小限に抑えるために、販売を中止するようなことです。

2不安の抗弁を認めた裁判例
⑴ 東京地裁昭和58.3.3判決
買主である乙社がいわば倒産前夜ともいうべき状況に陥入り、その時期以降において売主会社から商品の納品を受けても、その代金を決済することができる見込みはほとんどなかったものと推認することができる等の事情の下では、売主が、商品の納入を停止しても、公平の原則に照らし、違法ではない。

⑵ 東京地裁平成2.12.20判決
買主との継続的な商品供給取引の過程において、取引高が急激に拡大し、累積債務額が与信限度を著しく超過するに至るなど取引事情に著しい変化があって、売主が買主に対しこれに応じた物的担保の供与又は個人保証を求めたにもかかわらず、買主がこれに応じなかったばかりか、かえって、約定どおりの期日に既往の取引の代金決済ができなくなって、支払いの延期を申し入れるなどし、売主において、既に成約した本件個別契約の約旨に従って更に商品を供給したのではその代金の回収を実現できないことを懸念するに足りる合理的な理由があり、かつ、後履行の買主の代金支払いを確保するために担保の供与を求めるなど信用の不安を払拭するための措置をとるべきことを求めたにもかかわらず、買主においてこれに応じなかった場合においては、取引上の信義則と公平の原則に照らして、売主は、その代金の回収の不安が解消すべき事由のない限り、先履行すべき商品の供給を拒絶することができるものと解するのが相当である。

⑶ 東京地裁平成9.8.29判決
施主(請負工事の注文者)から支払条件の変更申し入れに対して請負業者が代金支払の確実性に疑念を抱いて工事を中止したことは,同申入れを請負人が受け入れなければならない義務はなく,これを拒否しても違法ではない。

3 契約書に明確に書いておくこと
不安の抗弁については、法律上の根拠規定はありません。ですから、どのような要件があれば認められるかは、明確ではありません。そこで、契約書上に、その要件を明確にしておくべきです。
例えば、①与信枠を設定してそれが一杯になったとき、その他一定の事由が生じたときは、相手方会社に、財務諸表、資金繰り表などの提出や追加担保の提供を求めることができる。②相手方会社がその提供をしなかったときは、商品の出荷を停止できる。③その場合は売主に債務不履行の責任は生じない。等の特約を、契約書上に書いておくべきです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり

Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから...

[ 契約書 ]

情報公開条例の誤解① 説明義務はない

Q 私はA市の情報公開担当課の者ですが,次のような請求に困っています。アドバイスを御願いいたします。1...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ