コラム

 公開日: 2013-03-18 

不動産 36 店舗等賃貸借契約と、通常損耗分についての原状回復

 1 原状回復規定
店舗や事務所等居宅以外の使用目的で結ばれた賃貸借契約書に、
第○条(原状回復義務) 賃借人は賃貸借契約が終了したときは、賃借人の費用で賃借建物に加えた造作その他を撤去し、賃貸借契約締結時の原状に回復しなければならない。
という趣旨の規定がある場合、賃借人の義務の範囲が問題になります。
具体的に言えば、賃借人が使用したことによる通常損耗分まで、賃借人の責任で回復する義務があると言えるのかが問題になるのです。

2 東京高判平成12年12月27日
 同判決は、本件原状回復条項は,前記のような文言の内容に照らして,造作その他の撤去にとどまらず,賃貸物件である本件建物を本契約締結時の原状に回復することまで要求していることが明らかであるとして,賃借人に対し,賃貸人から本件建物を賃借した時点における原状に回復する義務を課したものと解するのが相当であると判示しました。
この判決は、通常損耗分まで賃借人に原状回復義務を課しているのです。

3 大阪高判平成18年5月23日
同判決は、上記条項は,その文言に照らし,賃借人の用途に応じて賃借人室内諸設備等を変更した場合等の原状回復費用の負担や一般的な原状回復義務について定めたものであり,この規定が,賃借人が賃貸物件に変更等を施さずに使用した場合に生じる通常損耗分についてまで,賃借人に原状回復義務を認める特約を定めたものと解することはできないとしました。この判決は、上記の条項だけでは、通常損耗分まで賃借人に原状回復義務を課しているとはいえないというものです。

   4 条文の書き方次第
上記2つの高裁判決は、相反する内容に見えなくもないのですが、両者に共通することは、原状回復を定めた特約は有効だということです。
両判決が結論を異にしたのは、契約文言の明確性の違いです。
ですから、通常損耗分についても、賃借人が原状回復義務を負うことを明確にしておけば、賃借人は、その義務を負うことになります。
店舗等の賃貸借契約は、居住用建物賃貸借契約の場合と違って、消費者契約法の適用を受けることはないので、いかに賃借人に不利な内容であっても、消費者契約法を根拠に無効とされることはないからです。
条文としては、例えば,①「賃借人は、建物賃貸借契約終了の際は、通常損耗分を含めて、賃借建物を原状に回復する義務を負う。」
などと書くのがよいでしょう。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
相続税における「私道供用宅地の時価」の意味

相続税法22条及び評価通達は、相続税の対象になる財産の価額は相続時の時価によるものとすると定め、「時価」とは...

[ 民法と税法 ]

労働 歩合給から時間外手当(相当額)等を控除したものを賃金とする定めは有効

 最高裁判所第三小法廷平成平成29年2月28日判決は、タクシー会社が、従業員であるタクシー乗務員との雇用...

[ 労働 ]

同音異義語(追加1)

あからむ(赤らむ・明らむ)ア 赤らむ意味:色が赤くなること用例:顔が赤らむ熟語:赤面イ 明らむ...

[ 公用文用語 ]

労働 付加金の支払を命ずる場合の要件

労働基準法114条は、「裁判所は、・・・第37条の規定(筆者注:時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定)に違...

[ 労働 ]

文科省「用字用語の表記例」から③ 漢字と仮名の使い分け

文科省の平成23年3月31日付「用字用語の表記例」には、次の語について、漢字で書く場合と仮名で書く場合があること...

[ 公用文用語 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ