コラム

 公開日: 2013-01-25 

使用者のための労働問題 17 労働審判は便利⑦

⑶ 評価は不要、事実で勝負
昨日のコラムで、Aを解雇した理由を、Aの仕事における能力不足に絞った、ということを書きましたが、いうまでもなく、「能力不足」という言葉は、評価概念です。これは、つまりは、Aという労働者の仕事を見て、会社が求める仕事ができないという評価を、会社がしたというにすぎません。
 訴訟や労働審判で重要なことは、評価は、当事者やその代理人である弁護士がすべきことではなく、裁判所や労働審判委員会に、してもらわなければならないのです。
当事者や弁護士がすべきことは、裁判所や労働審判委員に、Aの能力不足と評価判断してもらえるだけの、事実の主張と立証なのです。
言葉を換えて言えば、「能力不足」という言葉を用いないで、「能力不足」を主張立証しなければならないのです。
別の表現でもって言いたいことを語った例として、七歩の詩という有名な詩があります。
これは、古代中国の三国時代、魏の曹操の子曹丕が、後継者争いをした弟・曹植を殺そうとして、曹植に、七歩歩く間に、兄弟という言葉を使わないで、兄弟の詩を作れ、それができないときはお前を殺す、と言い、詩を作らせたときの話です。
この難題に対し、曹植は、
豆を煮て持って羹(あつもの)を作り
豆支を漉(こ)して汁と為す
豆柄は釜下(ふか=釜の下)に在りて燃え
豆は釜中(ふちゅう=釜の中)に在りて泣く
本、同根自(よ)り生ず
相(あ)ひ煎(に)ること何ぞ太(はなは)だ急なると

という詩を作って、豆を曹植になぞらえ、豆柄を曹丕になぞらえ、同じ親から生まれた豆と豆柄であるのに、何故、豆柄は、豆を殺そうとするのか?兄弟の間柄なのに、あまりにむごい仕打ちではないかと、訴えたのです。そのため、曹丕は、大いに恥じ、おかげで、曹植は、詩を免れたのです。
この詩は、訴訟や労働審判での当事者の主張や立証とは、直接何の関係もありませんが、言いたいこと(Aの能力不足という評価)を、直接言うのではなくて、他の表現方法(具体的な事実を語る)をもって、言いたいことを理解してもらうという、評価と事実の関係が、この詩からなんとなく理解していただけるのではないかと思います。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ