コラム

2012-12-06

企業経営と危機管理 12 監査に問題あり

帳合取引では、商品は、甲→乙→丙と順に取引されるが、乙には現物が来ないので在庫はない。しかし、現物は甲→丙に動く。また、取引は丙の段階で終了する。これに対し、循環取引は、甲→乙→丙と取引される点、乙へは現物が移動しない点は似ているが、甲→丙への現物移動もなく、また、取引は丙で止まらず丙→甲へ継続しさらに循環する。この点が異なる。

しかし、帳合取引と循環取引は、外形が似ている部分があることから、社内で、循環取引が進められていても、関係者以外は、それを帳合取引だと誤解して、循環取引であることの発見が遅れることはある。

ここにKという、代表者が裸一貫、食品の行商から身を起こしてわずか50年で年商3000億円の売上を達成した上場会社がある。この会社の常務執行役員兼水産事業本部長のAが、この循環取引に手を染めたのである。Aがしたこの循環取引により、K社の損失は150億円にのぼり、資産の評価額も70億円下方修正し、立志伝中のカリスマ社長も辞任するという大不祥事になった。

この循環取引は、平成9年に始めた帳合取引が発端になった。K社は、前述の帳合取引「甲→乙→丙」の乙の立場で帳合取引を始めたのである。扱った商品は中国産の栗であった。ところが、この帳合取引の丙が資金繰りに窮する事態を迎え、Aは、丙を救済するために、取引に関係する会社の数を増やし架空の取引をするようになったのである。Aは、この中国産栗の循環取引をしている中で、K社の子会社による他の商品(調理器機など)についての循環取引も始め、取引額を増やしていった。これらの循環取引が発覚したのは、19年4月のことであるから、この違法な取引は10年間も、分からなかったのである。
監査の甘さが多くの分野の人から指摘された。とくに監査法人の監査は批判の対象になった。因みに、この監査法人は、カネボウ不正経理事件で担当会計士が粉飾決算に手を貸していたことなどの不祥事が続き、この年、解散した。

この事件は、不思議なことに、Aには経済的利得はなかった模様である。Aは、ただカリスマ社長の、売上増の叱咤激励を背に、売上増に狂奔したものとされているが、真相は定かではない。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
金融機関は遺言書とどう向き合うべきか?① 金融機関が考えるべきこと

 預金者が亡くなり,その預金を相続し,又は遺贈を受けたという者が,遺言書を持って,金融機関の窓口に現れた場...

[ 相続相談 ]

モデルルームでの不動産売買契約とクーリングオフ

Q 当社は,某宅建業者がマンションを建築販売する話を聞き,モデルルームを見学に行き,その場で投資用にマンシ...

[ 不動産 ]

開発許可にかかる工事を完成し検査済証を交付された後でも,開発行為取消訴訟は起こしうる(判例)

Q 市街化調整区域で開発許可の要件を欠いた業者が,開発許可を受け開発行為に関する工事を完了し検査済証を交付...

[ 不動産 ]

抗告状に貼付すべき印紙を貼付しなかった場合の瑕疵とその治癒に関する判例紹介

1 問題点①Aが訴訟救助の申立てをした。➁Aの申立ては却下された。③Aは却下決定に対する抗告をしたが,...

[ 民法雑学 ]

反社会的勢力を主債務者とする保証契約の効果(判例まとめ)

反社会的勢力を主債務者とする保証契約の効果について判示した,4件の最高裁判所第三小法廷平成28年1月12日...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ