コラム

 公開日: 2012-11-30 

企業経営と危機管理 6 現代版錬金術

平成18年12月、国内第3位の証券会社の持株会社であるN社は、証券取引等監視委員会から、会計処理の不正を指摘され、5億円の課徴金の支払いを命じられた。この不祥事により、N社は、株式の上場廃止は免れたものの、経営の悪化に見舞われ、外資系の金融機関の傘下に入ることになった。
同社がした不正経理とは、同社孫会社を通じてしたA株式の公開買付け(TOB)のときに付けた買付価格1株2万8000円を、時価だとして、孫会社の持つ他のA株式の時価もその価格で時価評価をした上で、時価会計処理したために、同社に140億円もの評価益を発生させたこと、A株式を購入する資金調達のためにEB債と呼ばれた金融派生商品(デリバティブ商品)を発行した時期を、実際に発行した日とは決算期の異なる他の事業年度に属する日に偽装したことなどであるが、この結果、N社は連結決算で187億円もの連結経常利益の水増しをしたのである。
この粉飾決算は、簡単に書くと以上のとおりだが、ここに至る実際の取引は、実に複雑な過程を通じてなされ、この会計処理は、法律や証券取引等監視委員会の定めるVC(ベンチャーキャピタル)条項と言われる規制に反していないという専門家の意見もあるくらい、意見の分かれるものではあった。しかしながら、この経理処理により、実体はそれまでと何も変わらないのに、突如、N社に187億円もの連結経常利益を生じさせた事実は、隠しようもない事実であり、この会計処理を違法でないとすることはできない。
そうでないと、どんな上場会社でも、意図的に簡単に利益を計上でき(その分、後の事業年度に損失を発生させることになる)、企業の経理に対する投資家その他の信頼を失ってしまう結果になる。
なお、この件での取引で、N社子会社は、違法な会計処理をした担当の社員6名の挙げた見せかけの利益に騙され、この6名に合計3憶4000万円の賞与を支給している。

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