コラム

 公開日: 2012-11-19 

相続相談 55 遺言執行者の義務―相続財産作成・交付義務

Q 私は遺言執行者になった者です。遺言書の内容は、すべて特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」と書かれた遺言書です。実は、私は、民法1011条の「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」という規定に従って、相続財産の作成とその相続人への交付義務があると思い、相続人に財産の開示を要請したのですが、相続人は関係ないと言って協力してくれません。どうすればよいのでしょうか?

A あなたの言われるように、遺言書がすべて特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」と書かれた遺言書であるのなら、遺言執行者には、相続財産目録の作成やそれを相続人に交付する義務はありません。
その理由は、次のとおりです。
ア 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めた遺言とされ、当該特定の財産は、遺言執行者の遺言の執行を必要としないで、相続開始と同時に、当該特定の相続人に移転しています(最高裁判所平成3年4月19日判決・いわゆる香川判決)。このような遺言にあっては、遺言執行者には、財産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務はありません(最高裁判所平成10年2月27日判決)。
イ 遺言執行者が管理しない財産については、民法1011条の目録の作成や相続人への交付義務はありません。ですから、あなたには相続財産目録の作成・交付義務はないのです。
すなわち、民法は、民法1011条に続けて、
民法1012条1項で「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」、民法1013条で「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」、民法1014条で「前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。」と規定していますが、
新版注釈民法(28)補訂版328ページでは、遺言執行者に課される相続財産目録の調整義務(1011)は、・・・相続財産に対する遺言執行者の管理処分権の対象を明確にするとともに(1012)、遺言執行者の相続財産引渡義務(1012Ⅱ・647)・・・を明確にするために、規定されたものであると解説し、また、同358ページでは、財産目録(1011)は遺言執行者が管理する特定の財産についてだけ調製すればよい・・管理処分権(1012)も特定の財産に制限される。・・遺言の対象が物的に制限・特定されている以上、それ以外の財産は、遺言の執行に関係ないからである。と書かれているのです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
住民監査請求があった場合の、監査委員の心構え

Q 私は、某自治体の監査委員をしている者ですが、住民監査請求書を,受理すべきか,不受理とすべきか,補正を求...

[ 地方行政 ]

建築請負契約における瑕疵認定の基準を定めた裁判例

仙台地裁平成23年1月13日判決は、 請負契約における「瑕疵」とは,“ 完成された仕事が契約で定めら...

[ 建築 ]

道路上の障害物により自転車事故等が生じた場合の責任割合(裁判例紹介)

道路上を自転車等に搭乗して、走行中、道路上の障害物や、道路から駐車場に入るときの障害物に衝突して転倒し人身...

[ 交通事故 ]

「等」と書くか、「など」と書くか?

「等」は、「常用漢字表」では「トウ」という字音と、「ひとしい」という字訓しかなく、「など」や「ら」という字...

[ 法令用語 ]

遺言の権利と相続権 2 現在の欧米及び我が国の遺言制度

1 欧米 遺言の権利を認めていた古代ローマ時代、個々の法律は他の法律との整合性を考えず制定されることが多...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ