コラム

2010-09-06

相続 2 相続開始原因


死亡
 民法882条は「相続は、死亡によって開始する。」と規定していますので、相続の開始原因は「人の死亡」です。いえ、「人の死亡」だけです。

 実は、我が国では、戦前の旧民法時代、戸主の死亡、隠居、国籍の喪失、去家などの戸主権喪失による家督相続という制度がありましたので、「死亡のみが相続の開始原因」ではなかったのです。
外国では、歴史的に、「準死」として、特定の疾患に罹ったり、特定の刑罰に処せられたり、僧籍に入ったりしたとき、財産上の能力が失われ、相続が開始することが認められてきましたが、現在でも、カトリック教会法(スペイン。ポルトガル、ギリシャなどが採用)は、僧籍に就く者の全財産が僧院に帰属することを定めていますので、これも「相続」だと考えると、「死亡」以外の相続原因があるのです。
ただ、「準死」により相続が開始すると言っても、その相続人が国家や僧院である場合は、「相続」とは言えないでしょう。特に、国家が相続する場合は、国家による「財産の収奪」の意味合いが強くなり、旧ソ連がした「相続法の廃止」と同じことになります。
すなわち、旧ソ連では、1918年の革命立法で相続法を廃止し、人が死亡したとき、その人が有していた財産はすべて国家に帰属することにしたのです。しかしながら、相続を否定すること自体、「人」を否定するに等しく、やがて1922年には、これをゆるめ、1万ルーブルまでは、配偶者と子に限り相続できるようになり、その後、相続を否定した革命立法そのものを廃止し、相続法は復活したのです。「相続」はいわば「人の基本的人権」だと思いますので、軽々にこれを廃することはできないと思われます。

失踪宣告
 「人の死亡」が相続開始原因である原則は変わりませんが、実は「人の死亡」の中には、「失踪宣告」があるのです。
 民法30条は、不在者つまり従来の住所又は居所を去った者が7年間生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができることになっています。この失踪宣告がなされるとその不在者は死亡したとして扱われますので、相続が開始します。これが「普通失踪宣告」と言われる制度ですが、乗っていた船が沈没して行方不明になった人など死亡が強く推定されるような危難に遭った人の場合は、7年待たなくともその危難が去った後1年間生死が分からないとき、はやり、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができることになっています。これは「特別失踪宣告」と言われます。
 不在者につき、失踪宣告を請求できる利害関係人とは、例えば、夫が死亡すれば生命保険金を請求できる妻です。
夫が海難事故に遭って生死が分からないとき、その海難事故から1年経てば、妻は失踪宣告を請求することができるのです。そして、失踪宣告後、保険金の請求も。

 保険金を受け取った後、夫が生きていることが分かったときは、当然、妻には保険金を返還する義務が生じますが、これは別の問題です。

死亡の時期
なお、相続の順位の関係で、人の「死亡の時期」が重要な問題になりますが、「普通の死亡」の場合は、死亡推定時刻がその死亡の時期とされ、「普通失踪」の場合は、7年間の失踪期間が満了した時に、また「特別失踪」の場合は、その危難が去った時(例えば海難事故の場合、海が静まり救出作業が開始した頃)に死亡したものとみなされます(後の2つは民法31条)。
さらに、例えば、親子が同じ海難事故で死亡したような場合、親と子のどちらが先に死亡したかによって相続関係が変わることがありますが、民法32条の2は、その死亡の先後関係が明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する、との同時死亡推定の規定を置いています。

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