コラム

 公開日: 2012-09-08 

相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記 

Q 父が先日亡くなりました。相続人は兄と私の2人ですが、父は「全財産を兄に相続させる」という遺言書を書いていました。兄はその遺言書によって、父名義の不動産をすべて兄名義にしました。
そこで、私は兄に対し遺留分減殺請求をしたのですが、登記はどうなりますか?

A 
1 被相続人の名義から、受遺者の名義になっている場合
遺言書によって、被相続人に属した財産はすべて、兄が相続したが、それが妹の遺留分を侵害する場合、妹からの遺留分減殺請求がなされると、その財産は、兄と妹が共有することになります。
その割合ですが、妹の持分は全財産に対する遺留分侵害割合、兄はその残りの割合になります。例えば、兄3/4、妹1/4です。
この場合で、すでに兄が被相続人名義の不動産につき、相続を原因として、所有権移転登記を受けているときの登記手続は、「遺留分減殺」を原因とする、兄から妹への持分1/4の移転登記になります。

この登記手続は、遺留分減殺請求者を登記権利者、すでに所有権移転登記を受けている受遺者を登記義務者とする共同申請によります。
登記原因証明情報は、遺留分減殺を証する書面(配達証明付き内容証明郵便による遺留分減殺請求書など)と、相続関係を証明する戸籍謄本等です。
兄がこの登記手続に協力してくれない場合は、妹から兄に対し、遺留分減殺請求による一部移転登記を求める訴訟を起こし、遺留分減殺による移転登記を命ずる確定判決を得ると、単独で登記手続の申請ができます。
この場合は、戸籍謄本等の資料は必要ありません。判決手続の中で、裁判所が、相続関係を調査しているからです。
なお、登記の目的は、所有権一部移転、登記原因は遺留分減殺、日付はいずれも遺留分減殺請求の意思表示を記載した内容証明郵便が送達された日になります。

2 まだ、不動産が被相続人のままになっている場合に、遺留分減殺請求がなされたとき
このときは、遺言書により兄の名義にした上で、「遺留分減殺」を原因として妹へ一部移転登記をするのが、権利変動の過程を登記に反映させる趣旨から、望まれしいものですが、登記先例(昭30.5.23民甲973民事局長回答)は、被相続人の名義から「相続」を原因として、直接遺留分減殺義務者と遺留分権利者の共有に登記をすることも認めています。

3 遺産共有か共有物共有か
遺留分減殺請求の結果、遺贈財産が遺留分権利者と受遺者の共有になりますが、この共有は、遺産共有ではなく、共有物共有(物権法上の共有)です(最判平8.1.26)ので、その共有関係を解消するには共有物分割になります。


この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

17

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(3)寄与分の控除・加算型
イメージ

【補説】寄与分とは、被相続人の生前、相続人が遺産になる財産の増殖(価値の増大)に貢献した貢献分のことを...

独禁法って何だ?4 公取委から人がやってきたとき・独禁法と下請法との関係・下請法版リーニエンシー

8 会社が公取委から事情聴取の申込みを受けた場合「のう、後藤よ!会社にとっては、あまり嬉しくもないことだ...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

独禁法って何だ?3 課徴金対象行為・課徴金減免措置・カルテル防止義務

5 課徴金の対象となる行為と課徴金額「課徴金が課せられるという場合、どのくらいの金額になるのかのう。」...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

独禁法って何だ?2  証券会社の損失補填事件

4 証券会社の損失補填事件「のう、後藤!独禁法の規定は、不明確な用語が使われていて、意味が分かりにくいと...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ