コラム

 公開日: 2012-08-25 

相続相談 45 「相続させる」遺言と遺言執行者②

(昨日のコラムの続きです)
4 遺言執行者が不要になるものではない
最判平11.12.16は、
①相続させる遺言が即時の権利移転の効力を有するからといって、当該遺言の内容を具体的に実現するための執行行為が当然に不要になるというものではない
②不動産取引における登記の重要性にかんがみると、・・・甲(筆者注:相続させる遺言によって不動産を取得した相続人)に当該不動産の所有権移転登記を取得させることは、民法1012条1項にいう「遺言の執行に必要な行為」に当たり、遺言執行者の職務権限に属するものと解するのが相当である。
③もっとも、登記実務上、相続させる遺言については不動産登記法27条(筆者注:現63条2項)により甲が単独で登記申請をすることができるとされているから、当該不動産が被相続人名義である限りは、遺言執行者の職務は顕在化せず、遺言執行者は登記手続をすべき権利も義務も有しない(と最判平7.1.24を引用)。
④しかし、甲への所有権移転登記がされる前に、他の相続人が当該不動産につき自己名義の所有権移転登記を経由したため、遺言の実現が妨害される状態が出現したような場合には、遺言執行者は、遺言執行の一環として、右の妨害を排除するため、右所有権移転登記の抹消登記手続を求めることができ、さらには、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることもできると解するのが相当である。
⑤この場合には、甲において自ら当該不動産の所有権に基づき同様の登記手続請求をすることができるが、このことは遺言執行者の右職務権限に影響を及ぼすものではない。
と判示しておりますので、④の場合、すなわち、遺言の実現が妨害される状態が出現したような場合に限り、遺言執行者に、妨害排除としての「所有権移転登記の抹消登記手続」を求めることができ、さらには、遺言実現のための「甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続」を求めることができることになります。

5 しかし、不動産の維持管理に遺言執行者の権限は及ばない
最判平10.2.27は、
①特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言・・・がされた場合においては、遺言執行者があるときでも、遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者は、当該不動産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務を負わないと解される。
②そうすると、遺言執行者があるときであっても、遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、右特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人であるというべきである。
と判示していますので、遺言執行者には、財産の維持管理の権限もないことが分かります。

6 遺言執行者を必要とするかどうかは、遺言の内容次第
しかしながら、「遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情」があれば、遺言執行者の出番がやってきます。それについては明日のコラムで解説します。

以上、最判の判断の跡をたどってみると、遺言執行者の権限や役割が分かると思われます。
あなたの場合、遺言執行者を必要とするか否かは、結局のところ、遺言の内容次第です。

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