コラム

 公開日: 2012-08-18  最終更新日: 2012-12-06

相続相談 38 相次相続と特別受益

Q 父が遺言を書かず1億円の財産を残して亡くなりました。
相続人は、母と兄と私の3人です。
その直後、父の遺産分割もしないうちに、今度は母が亡くなりました。
母は、自分の預金2000万円を全部兄に相続させる旨の遺言書を書いていました。
その後、私と兄で、父の相続財産と母の相続財産について、遺産分割協議を始めました。
ここで兄の言い分ですが、兄は、
①父の相続財産については、兄も私も特別受益や寄与分はないので、相続財産が1億円であることを前提にして、兄の具体的相続分も私の具体的相続分も5000万円になる。それを基準に父の相続財産を分割しよう。
つまり、
(ア)父の相続財産1億円 → 兄が5000万円、妹の私が5000万円
で分ける。

②母の相続財産については、母の財産が2000万円の預金だけであり、その預金をすべて兄が遺言で取得しているので、遺産分割の対象になる相続財産は残っていない。しかし、私には、遺留分があるので、遺留分割合分1/4の500万円は、兄から私に返還する。
つまり、
(イ)母の相続財産は0、遺産分割なし
(ウ)母の遺贈財産(預金) → 遺留分減殺処理 → 兄が1500万円、私が500万円
になる。
というものですが、そうなのですか?

A いいえ。そうではありません。
お兄さんがする計算方法は間違っています。
①まず、父の相続財産1億円ですが、これは母と兄と私の3人が、それぞれ法定相続分に相当する「遺産の共有持分権」という財産の形で取得しているのです(最判平17.10.11)。「遺産の共有持分権」という考えは、相続財産が全相続人の共有(民法898条)であること、その共有は民法の共有の性格と同じ性格を有する(最判昭30.5.31)ことから導かれるもので、実体上の権利なのです。
ですからお兄さんが計算する(ア)は間違いで、正しくは、
(ア)父の相続財産1億円 → 母が5000万円、兄が2500万円、私が2500万円に相当する遺産の共有持分権
になるのです。
③次に母の相続財産ですが、これは0ではなく、父の遺産の共有持分権1/2が相続財産になります。
つまり、
(イ)母の相続財産は、父の遺産の共有持分権1/2(評価額5000万円)
になるのです。
ですから、兄と私は、これの遺産分割ができます。そして、その遺産分割では、母が遺言で兄に取得させた預金2000万円が特別受益として持戻し計算をしますので、その結果、兄と私の具体的相続分は、それぞれ1500万円と3500万円になります。
つまり、
(ウ)母の相続財産5000万円 → 遺産分割 → 兄が1500万円、私が3500万円

全体から見ると、
あなたの場合、残された財産は父の1億円ですが、これを
兄は(ア)の2500万円 + (ウ)の1500万円=4000万円
私は(ア)の2500万円 + (ウ)の3500万円=6000万円
の具体的相続分で分けることになるのです(最判平17.10.11参照)。

なお、最初の相続つまり第1次の相続では相続人であった者(あなたの例では、母)が、第2次の相続では被相続人になる相続を、「再転相続」といいます。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
合理的根拠資料を持たずして、効果・性能表示をなすなかれ

 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、「不当表示」を禁じています。その一類型である「優良誤認表...

[ 会社関係法 ]

従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効

東京地方裁判所平成28年12月19日判決は、会社が従業員との間で競業避止契約を結び、従業員から退職の申し出...

[ 会社関係法 ]

店舗外観を不正競争保護の対象にした初裁判

東京地方裁判所平成28年12月19日決定(仮処分決定)は、甲社が直接又はフランチャイズ契約により加盟店に営...

[ 会社関係法 ]

これからの契約実務⑤ 動機を書いて置けば、動機の錯誤で契約の取消し可能

 契約書に「契約の内容」としての「目的」を書いておけば、その目的が達成できないことが分かった時は、契約を「...

[ 債権法改正と契約実務 ]

これからの契約実務④ 金銭消費貸借契約では,諾成的契約が可能になる

現行法の下では、金銭消費貸借契約は、要物契約、つまりは、現金を交付することで成立する契約になっていますが、...

[ 債権法改正と契約実務 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ