コラム

 公開日: 2012-07-28  最終更新日: 2012-08-15

相続相談 17 遺産分割方法の指定と遺言執行者の権限

Q 「相続ノート」83ページでは、
①被相続人が、遺言で、特定の財産を、特定の相続人に、「相続させる」と書いた遺言は、特段の事情がない限り、遺産分割方法の指定であること(最判平3.4.19)、
②遺産分割方法の指定の遺言は、遺言者の死亡と同時に効力が生じているので、遺言執行者がいても、遺言の執行の必要がないこと(同最判)、
の説明がありますが、そうすると、遺言事項が遺産分割方法の指定だけの遺言の場合は、遺言執行者は必要がない、ということになるのですか?

A いいえ。遺言執行者が必要のない存在だとは言えません。

1遺言執行者の権限
たしかに、遺産分割方法の指定は、遺言者の死亡と同時に、効力が発生するので、遺言執行者による遺言の執行を必要としません。
しかし、遺言執行者には、実務上、遺言者(被相続人)名義の預貯金の名義変更・払戻し・解約等の権限が、認められています(公正証書遺言では、遺言書に、このことが書かれる場合があります)。
この権限により、遺言執行者は、被相続人の財産の調査をしたり、預貯金の名義書換や払戻・相続人への引渡ができます。
さらに、遺言執行者には、一部の相続人が遺産分割方法の指定に反する不実の登記をした場合、それを回復する権限も、認められています(最判平11.12.16・「相続ノート」87ページ3.⑶②)。
ですから、遺言事項が遺産分割方法の指定の場合、遺言執行者の執行行為がなくとも、効力が生じていますが、遺言執行者には、以上のような権限をもって、遺産分割方法の指定の後の、相続人がなすべき事務的な処理を、側面から援助してくれるのです。

2当事者性は否定される。
ただ、遺言事項が遺産分割方法の指定の場合は、遺言執行者が、訴訟の当事者になることは否定されています。
例えば、不動産について遺産分割方法の指定をしますと、被相続人の死亡により、直ちにその不動産は指定された相続人の所有になりますので、その不動産に賃借権があると主張する者が賃借権確認訴訟を起こす場合は、遺言執行者ではなく、当該相続人を被告にすることになります(最判平10.2.27)。

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