コラム

 公開日: 2012-06-26  最終更新日: 2012-08-15

交通事故 45 過失相殺② 被害者側の過失

1 意味
被害者の過失は、過失相殺の対象になるが、「被害者側」と評価される者の過失も、被害者の過失と同視され、過失相殺の対象になる。最判42.6.27によれば、被害者と同視できる「被害者側」とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」である。
具体的には、次のような者になる。

⑴ 親族関係上の身分
・監護義務者である父母(最判昭44.2.28)
・配偶者・内縁の配偶者(最判平19.4.24)
例えば、被害者その者には過失はなくとも、被害者を監護していた両親に過失がある場合、あるいは、配偶者が車を運転していて対向車と衝突し、その車に同乗していた被害者に損害が生じた場合、被害者には過失はなくとも被害者の配偶者に過失がある場合は、過失相殺されることになる。

⑵ 雇用契約上の身分
・被用者が運転する車に乗っていた雇用主から加害者への損害賠償請求では、被用者の過失は過失相殺の対象になる(大判大正9.6.15)。


3 被害者側であることが否定された裁判例
⑴ 独立した世帯を構える兄弟姉妹
・弟の運転する車に乗っていて事故死した兄の遺族から、加害者に対し損害賠償の請求をした件で、この事件の兄弟は生活関係を一体としているのではない、との理由で、弟の過失は被害者側の過失にはにはならないとして過失相殺が否定された浦和地判昭46.4.22、
・兄が運転する車に同乗していた妹が、既に結婚をして別世帯を構えていたケースで、兄は被害者側の者とはいえないとの理由で、兄の過失による過失相殺を否定した名古屋地判昭47.6.14、

⑵ 保母、子守を頼まれた近所の主婦等
・これらの者に過失があっても、被害者とは身分上、生活関係上の一体性はないので、被害者側の者にはならない(最判昭42.6.27)
⑶ 同僚、友人による好意同乗
この場合は、これらの者に過失があっても、被害者側の者にはならないので、被害者の過失と同視できない(最判昭56.2.17)。ただし、次の4の場合は過失相殺される。

4 被害者の過失と見られる場合
・共同でドライブを計画して交代で運転をしていた場合は、これに参加した者全員が、共同運行供用者とされるので、事故の時運転をしていなかったとしても、運転していた者に過失があれば、過失相殺の対象になる(東京地判昭44.11.28)。
・助手に無免許運転をさせていた者も同様(東京地判昭42.5.24)。
・友人と酒を飲み、友人が酒気を帯びて運転したときの友人の過失の場合も同じ(名古屋地判岡崎支判昭55.7.9)。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
「相続させる」遺言法理①  「相続させる」遺言法理は、最高裁・香川判決から始まる

「 私は、不動産の全部を、長男凸山一郎に相続させる。 」というような、特定の遺産(例では「不動産の全部...

[ 相続判例法理 ]

新著の上梓報告

今週の月曜日から金曜日までの、私のマイベストプロのサイトを訪問してくださった人の数は、連日、2000名を超...

[ 相続判例法理 ]

損害の発生後45年が経過して行使された損害賠償請求権が,消滅時効にかかっていないとされた裁判例

 45年前,新生児が誕生しましたが,母親の退院時,病院のミスで,新生児が取り替えられるという事故がありまし...

[ 民法雑学 ]

宅地建物取引業者の税金についての説明義務

 宅地の売買などをしますと,不動産譲渡所得課税問題が生じますが,その売買契約を仲介した宅地建物取引業者に,...

[ 不動産 ]

遺産分割に関する最高裁判決まとめ

・預貯金債権は,可分債権ではないので,遺産分割対象の財産になる(平成28年12月19日最高裁判所大法廷決...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ