法律相談で悩み解決に導くプロ
コラム
公開日: 2012-06-11 最終更新日: 2012-08-15
交通事故 29 慰謝料② 死亡慰謝料が増額される場合
1 増額理由
次のような場合は、慰謝料は増額される。
⑴ 残された遺族の扶養を特に考慮する必要がある場合
・兼業主婦49歳が死亡し、17歳の娘が残された事案(事故日は平15.12.5)で、本人分2600万円、娘固有の分400万円、合計3000万円を認めた東京地判平15.12.5
・38歳の若さで死亡。残された遺族は妻と2人の子という事案(事故日は平16.8.21)で、本人分2800万円、妻固有の分200万円、子2人の固有の慰謝料各100万円、合計3200万円を認めた札幌地判平18.8.11
・29歳の男性が平16.4.11事故死。本人分2800万円、妻と長女に固有の慰謝料として各200万円、合計3200万円を認めた千葉地松戸支判平19.12.26等がある。
⑵ 扶養家族が多い場合
・34歳の男性が平17.7.11事故死。本人分3000万円、妻200万円、父母各100万円合計3400万円を認めた東京地判平20.8.26等がある。
基準額は2800万円であるから、これらの裁判例では、基準額より高く認定されている。
⑶ 加害者の悪性が強い場合も慰謝料は増額する。
飲酒運転、危険運転、不合理な弁解をして、責任逃れをする加害者などの場合である。
・東京地判平15.7.24は、酒酔い運転をし、高速道路上で、渋滞のため同方向に減速して進んでいた被害車両の後部に衝突し被害車両を炎上させ、被害車両後部に乗車していた子供2人を死亡させた事故で、加害者に、子1人につき3400万円の慰謝料(本人分2600万円、両親の分各400万円合計3400万円。子供の慰謝料の赤い本による基準額は1人につき2000万円から2200万円なので、かなりの増額)支払を命じた。この判決が高額の慰謝料を認めたのは、加害者が飲酒酩酊の上蛇行運転をし、被害車両に追突炎上させ、幼い子を両親の目の前で焼け死なせていること等が考量されている。
こちらの関連するコラムもお読みください。
- 交通事故 66 ヘルニア2013-04-02
- 交通事故 56 任意保険② 人身傷害保険(人身傷害条項)2012-07-07
- 交通事故 21 逸失利益⑫ 定期金賠償は認められるか?2012-06-04
- 交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例2012-06-06
- 交通事故 25 後遺障害③ PTSD(心的外傷性ストレス障害)2012-06-08
最近投稿されたコラムを読む
- ホールディングスのメリット・デメリット 2018-04-26
- 先進各国のコーポレート・ガバナンスの今 2018-04-23
- 「所有と経営の分離」と「所有と支配の分離」 2018-04-21
- コーポレート・ガバナンスとエクイティ・ファイナンスとの関係 2018-04-20
- 内部統制システムとは、何?⑪ ついに自治体の長の義務にもなる 2018-04-13
このプロの紹介記事

事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...
プロのおすすめコラム
› 新着記事一覧
ホールディングスのメリット・デメリット
菊池:ところで,後藤!純粋持株会社(ホールディングス)を創るメリットは何だ?後藤:のう、菊池!。かつて、...
先進各国のコーポレート・ガバナンスの今
1 わが国の場合 わが国では、バブル経済の崩壊後、一気に会社経営者の不祥事が表面化して、「ガバナンスに問...
「所有と経営の分離」と「所有と支配の分離」
1 所有と経営の分離英語では、株主をshareholder(シェアホルダー)といい、社債権者をbondholder(ボンドホル...
コーポレート・ガバナンスとエクイティ・ファイナンスとの関係
コーポレート・ガバナンス(corporate governance)とは、「企業統治」とか「会社の運営機構」などと訳されてい...
内部統制システムとは、何?⑪ ついに自治体の長の義務にもなる
会社の取締役の、内部統制システム整備義務は、自治体の長の義務にもなった。すなわち、平成29年6月2日に,地方自...
人気のコラムTOP5
-
- 1位
- 労働 減給処分における減給額の制限 114よかった
-
- 2位
- 間違えやすい法令用語1 「施行する」・「適用する」 107よかった
-
- 4位
- 公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし 69よかった
-
- 5位
- 法令用語 「ないし」や「乃至」は使わず,「から・・・まで」を使う。 68よかった
コラムのテーマ一覧
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編)
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
スマホで見る
このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。
バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。