法律相談で悩み解決に導くプロ
コラム
公開日: 2012-06-12 最終更新日: 2012-08-15
交通事故 30 慰謝料③ 後遺症慰謝料
1 意味
後遺症慰謝料は、通常の傷害による慰謝料を含まない、後遺症のみを対象に支払われる慰謝料である。後遺症が残った被害者には、後遺症の症状が固定するまでの間は、傷害慰謝料が支払われ、症状固定後は、後遺症慰謝料が支払われるのである。
2 慰謝料請求権者
⑴ 被害者本人
⑵ 近親者 ・・・被害者が死にも比肩し得る後遺症を負った場合、近親者固有の慰謝料が認められている。
3 基準額と増額原因
これは死亡慰謝料と同じである。
特に、後遺症の場合、後遺障害等級表に該当する後遺症が複数生ずる場合もあり、その場合は、後遺症の併合により、等級が上がる場合もあるが、そうでない場合もあり、同じ1級の後遺症でも精神的苦痛には差が生ずる。
裁判では、後遺症が複数ある場合や、近親者に固有の慰謝料が認められる場合等では、基準額が増額されている。
4 いわゆる赤い本の基準額と基準額が増額された裁判例(裁判例は赤い本2012年版から引用)
1級 2800万円(裁判例:3780万円、3500万円、4000万円、3800万円)
2級 2370万円(裁判例:2800万円、3100万円、3450万円、3140万円)
3級 1990万円(裁判例:2000万円、2200万円)
4級 1670万円(裁判例:1700万円、1800万円、1750万円)
5級 1400万円(裁判例:1750万円、1450万円、1500万円、1700万円、1600万円)
6級 1180万円(裁判例:1300万円、1400万円)
7級 1000万円(裁判例:1100万円、1200万円、1250万円等)
8級 830万円(裁判例:1000万円、950万円、1200万円、996万円)
9級 690万円(裁判例:700万円、750万円))
10級 550万円(裁判例:560万円、800万円)
11級 420万円(裁判例:500万円、590万円)
12級 290万円(裁判例:550万円、500万円、360万円、400万円、350万円)
13級 180万円(裁判例:300万円、200万円、220万円)
14級 110万円(裁判例:300万円、180万円、150万円、250万円、210万円165万円)
1級の後遺症で、慰謝料3750万円が認められた事件は、痴呆・尿失禁の精神障害(2級2号)+ 視力障害(2級1号)=併合1級の主婦に、本人分3200万円、近親者2名に580万円、合計3750万円が認められたもの(青森地判平13.5.25。)。また、4000万円が認められた事件は、高次脳機能障害(1級)+ 1眼摘出(8級)=併合1級の事故時21歳の女性に、本人分3200万円、父母各400万円、合計4000万円が認められたもの(東京地判平16.6.29)である。
5 弁護士の思考停止は厳禁
これも死亡慰謝料の場合と同じで、被害者の後遺障害等級のみを見て、機械的に、基準額しか請求できないと考えてはならない、ということである。
こちらの関連するコラムもお読みください。
- 交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例2012-06-06
- 交通事故 56 任意保険② 人身傷害保険(人身傷害条項)2012-07-07
- 交通事故 21 逸失利益⑫ 定期金賠償は認められるか?2012-06-04
- 交通事故 66 ヘルニア2013-04-02
- 交通事故 25 後遺障害③ PTSD(心的外傷性ストレス障害)2012-06-08
最近投稿されたコラムを読む
- 先進各国のコーポレート・ガバナンスの今 2018-04-23
- 「所有と経営の分離」と「所有と支配の分離」 2018-04-21
- コーポレート・ガバナンスとエクイティ・ファイナンスとの関係 2018-04-20
- 内部統制システムとは、何?⑪ ついに自治体の長の義務にもなる 2018-04-13
- ロータリーの卓話から 倉敷もん 2018-04-09
このプロの紹介記事

事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...
プロのおすすめコラム
› 新着記事一覧
先進各国のコーポレート・ガバナンスの今
1 わが国の場合 わが国では、バブル経済の崩壊後、一気に会社経営者の不祥事が表面化して、「ガバナンスに問...
「所有と経営の分離」と「所有と支配の分離」
1 所有と経営の分離英語では、株主をshareholder(シェアホルダー)といい、社債権者をbondholder(ボンドホル...
コーポレート・ガバナンスとエクイティ・ファイナンスとの関係
コーポレート・ガバナンス(corporate governance)とは、「企業統治」とか「会社の運営機構」などと訳されてい...
内部統制システムとは、何?⑪ ついに自治体の長の義務にもなる
会社の取締役の、内部統制システム整備義務は、自治体の長の義務にもなった。すなわち、平成29年6月2日に,地方自...
ロータリーの卓話から 倉敷もん
本日、聞いた卓話、面白かったので、紹介します。題して「倉敷もん」日本人は、「道」が好き。茶道、柔道、...
人気のコラムTOP5
-
- 1位
- 労働 減給処分における減給額の制限 114よかった
-
- 2位
- 間違えやすい法令用語1 「施行する」・「適用する」 107よかった
-
- 4位
- 公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし 68よかった
-
- 5位
- 法令用語 「ないし」や「乃至」は使わず,「から・・・まで」を使う。 67よかった
コラムのテーマ一覧
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編)
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
スマホで見る
このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。
バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。