コラム

 公開日: 2012-05-31  最終更新日: 2012-08-15

交通事故 17 逸失利益⑧ 逸失利益と退職金(差額)

1 退職金も逸失利益の一部として認められる
最判昭43.8.27は、「死亡当時(筆者注:後遺症の症状固定時も同じことになる)、安定した収入を得ていた被害者において、生存していたならば将来昇給等による収入の増加を得たであろうことが、証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には、右昇給等の回数、金額等を予測し得る範囲で控え目に見積もって、これを基礎として将来の得べかりし利益の収入額を算出することも許される」と、一般的な逸失利益の考え(昇給分を含む基礎年収を認める考え)を述べた後で、退職金についても、①会社の就業規則に基づき基本給に対する比率が定められていること、②基本給が将来の昇給を含めて推定により算出できること、③これら算定方法には客観性が認められること、により、事故による死亡当時22歳の男性につき、定年退職予定時における退職金から、中間利息を控除した金額を、逸失利益の一部として認めた。

2 退職金(又は退職金差額)が年収を基礎とした通常の逸失利益の他に認められる要件
① 勤務先の就業規則で、退職金の支給が約束されていること
② 退職金の算定基準が明確であり、退職金の算出が可能であること
③ 定年退職まで勤務する蓋然性があること(被害者が最終学歴卒業後から就職している等は有利な事情)
④ 退職金支給の蓋然性があること(大手の会社であることや、被害者が公務員であることは有利な事情)
⑤ 死亡又は後遺症と退職との間に因果関係が認められること
なお、退職金差額とは、定年時まで就職していた場合に支給される退職金額から、事故により退職した時に支給された退職金額の差額を言う。

3 退職金(又は退職金差額)を逸失利益の一部として認めた最近の裁判例
・東京地判平22.10.28は、死亡時31歳の最大手鉄道会社社員。退職時は29年後
・仙台地判平17.7.20は、死亡時29歳の銀行員(女性)。退職時まで31年
・大阪地判平17.3.25は、事故時42歳、症状固定時45歳の財団職員。退職時は20年後

なお、死亡による逸失利益の計算式には、生活費の控除項目があるが、死亡による逸失利益の別枠となる退職金については、生活費を控除しない裁判例が多い。
逸失利益と退職金、それに裁判例については、いわゆる赤い本2012年下巻15ページ以下に詳しい。


この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
割増賃金の定額化に関する判例後の通達

すでに本コラムで紹介しました割増賃金の定額化に関する、最高裁判所平成29年7月7日判決を踏まえた通達が、同月31...

[ 労働 ]

大切にしたいもの 一能

吉川英治が描く、「私本太平記」の中に、楠正成が、一人の仮面師(めんし=鑿(のみ)を使って人の顔をつくる者) ...

[ 大切にしたいもの ]

特別の利害関係のある取締役が、取締役会決議に関わった場合の取締役会決議の効果

問題会社法369条は「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定め...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

就業規則の一括届出制度について

1 就業規則の届出義務は、事業場ごとに。労働基準法89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に...

[ 労働 ]

我がコラムへのご訪問、ありがとうございます

昨日の私のコラムへの訪問者数は3400名、閲覧コラム総数は6586通でした。訪問者数では、過去最高を越え...

[ その他 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ