コラム

2012-05-30

交通事故 16 逸失利益⑦ 労働能力喪失割合と弁護士

1 労働能力喪失割合も、法的判断
 通常、後遺症が残遺したときの労働能力喪失割合は、労働省労働基準局通達に示された労働能力喪失率表によっているが、最判昭48.11.16は、被害者の職業と後遺症の具体的状況を考え、裁判所が、独自に、労働能力喪失割合を認定できることを宣明した。
 この事件の被害者は、定年退職後、ピアノ、書道等の家庭教師として稼働していた元教師。交通事故による後遺症は9~10級。したがって、労働能力喪失率表では労働能力喪失割合は35~27%。しかし、被害者は、後遺症により右大腿部に筋萎縮が生じ、膝関節の可動時は疼痛が生ずる他、日常の起居に杖がないと直ちに疼痛を生じて歩行が不能となり、正座もあぐらも横座もできず、乗物の乗降にも他の介添を要し、雨天時には傘をさしての歩行もできない、という状況。そのために被害者は家庭教師をやめてしまつた、という事件である。
原審裁判所は、被害者が症状固定時63歳であったことも考慮し、労働能力の喪失割合は90%になる旨判示し、最判がこれを支持したのである。

2 後遺障害等級の低い被害者の場合でも
・頸部通等の14級の後遺障害のある49歳の主婦に労働能力喪失割合20%(喪失率表では5%)を認めた広島地判平2.11.15
・14級の後遺障害を受けた59歳男子タクシー運転手に14%の労働能力喪失割合を認めた岡山地判平5.4.23

・12級の後遺障害を受けた48歳男性に、労働能力喪失割合24%(喪失率表では14%)を認めた名古屋地判平4.4.23
・12級の後遺障害を受けた69歳男性調理師に、労働能力喪失割合79%(ただし期間は14ヶ月間)を認めた神戸地判平3.6.25
等多数がある。

3 注意すべきこと
後遺症の等級から、機械的に、労働能力喪失割合が決まるのではない。後遺症の内容、程度、被害者の勤務や稼働状況とそれへの影響によって、将来の労働能力喪失割合が決まる。その認定は、裁判所になる。つまり、等級表を超える労働能力喪失率を認めてもらうのは、訴訟を起こす他方法はない、ということである。

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