コラム

 公開日: 2012-05-29  最終更新日: 2012-08-15

交通事故 15 逸失利益⑥ 症状固定日と弁護士

1 症状固定日は、法的判断
交通事故に遭い、怪我をして、休業するに至った場合で、後遺症が生じたときは、症状固定日の前までの休業に対しては休業損害金が支払われ、症状固定日以後の休業に対しては逸失利益が支払われるが、昨日のコラムで書いたように、その場合、休業損害金は高く、逸失利益は低くなるので、症状固定日の認定が遅ければ遅い方が、損害の認定額は大きくなる。
このことから分かるように、症状固定日の認定は、ある時点の休業を、休業損害金の対象にするか、逸失利益の対象にするかという価値判断の伴う、法的な判断である。

2 実務上は、医師の判断で決まってくる。
症状固定日をいつにするか、という問題は、前述のように法的な判断事項であり、訴訟になったときは、裁判所の専権に属するものであるが、訴訟実務上は、医師が「後遺障害診断書」に書いた症状固定日をもって、症状固定日としているのが実情である。これは、被害者の代理人である弁護士も、それにさしたる疑問を持たず、医師が「後遺障害診断書」に書いた症状固定日をもって、症状固定日とするのを当然視しているからであると思われる。また、訴訟外での示談の場でも、医師が「後遺障害診断書」に書いた症状固定日をもって、症状固定日としていつのが実情である。

3 医師の判断には裁量の幅がある
症状固定とは、「相当の治療期間を経て、これ以上治療をしても治療効果が認められない段階になった時」であるが、医師が症状固定日をいつと定め「後遺障害診断書」にそれを書くかについては、明確な基準があるわけではなく、その裁量の幅は大きいものがある。
医師が、被害者のためを思い、熱心に治療を続け、なお治療を続ける必要があると考えたときは、まだ症状固定とは言えないが、医師によっては、他の医師ならまだ症状が固定したと考えない時点を症状固定日とすることも、当然にありうることである。

4 保険会社からの働きかけ
実務上、ときに、保険会社の従業員が、被害者が治療を受けている病院に対し、治療の打ち切り(むち打ち症について多い)や、後遺症の症状固定日の早期確定を促している場面に遭遇することがある。
保険会社のその促しに対しては、医師も、前述のように、いつを症状固定日とするかについては、裁量権をもっているが故に、保険会社から、治療の打ち切りが通告され、それ以後の治療費は保険会社では支払わないと言われると、それが圧力になり、症状固定日が早まる可能性が大いにある。

5 弁護士としてすべきこと
弁護士、特に被害者の代理人になった弁護士は、真に交通事故で被害に遭った被害者のため、十二分に治療を受けさせる環境を維持できるよう腐心すべきである。そのためには、被害者から詳しく症状などを聞き出し、ある程度の交通事故による外傷その他の障害の知識をも持ち、担当医に会って、診療その他について質問をする等をすべきであろう。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

独禁法って何だ?1 独禁法・公取委・課徴金

1 独禁法「のう、後藤よ!独禁法って何だ?」「独禁法は略称でなあ、正しくは“私的独占の禁止及び公正取引の...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法
イメージ

【補説】単純型というのは、生前贈与も遺贈も寄与分もない場合のことです。単純型は、遺産の額に、法定相...

哲学とは何?

 ここまでに、徳川家康の残した処世訓のこと、法の箴言のこと、を書いてきたが、処世訓も箴言も、実に意味深い言...

[ 格言や歴史上の偉人の言葉に学ぶ ]

第2章 1遺産分割 1遺産分割とは(3)遺産分割内容を決める二つのステップ
イメージ

【補説】相続人間で、順を追って、具体的相続分を算出し、その具体的相続分に見合う遺産をどのように分割取...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ