コラム

 公開日: 2012-05-20  最終更新日: 2012-08-15

交通事故 6 休業損害金② 事業所得者

1 休業損害金の計算式
事業所得者は、事業収入-原価・経費=事業所得
を前提に、休業損害金を計算する。
これらの金額は、事故前の一定期間(多くの場合、前年の所得税の確定申告資料によるので1年間)の実績数値の平均値になる。なお、税金は控除しなくともよいことは休業損害金①で解説済み

2 休業期間
これは休業した全期間が原則だが、一定期間の休業損害金を所得の100%、その期間経過後はその一定割合とする裁判例も散見される。後遺症の症状が固定した後は、休業損害金は認められず、逸失利益の一部とされる。ただし、事案によっては、症状が固定した日以後の分を含めて、就職の遅れによる損害を、大学卒業まで認めた裁判例(休業損害金①を参照)もある。

3 過少申告の場合
実際の事業収入は確定申告による金額より多い(過少申告)という場合、それが証明できれば、それによる。東地判平15.12.1・横浜地判平20.9.4など。
経費の過大計上による場合でも、実際にかかった経費が確定申告額よる少ないという場合も同じである。
無申告や赤字申告の場合も同じである。
しかしながら、確定申告額より多い事業所得があったという場合、その証明はかなり高度なものが要求される。「何人をも納得させるに足る高度の証明を要する」と判示する判決(東地判昭62.6.19)もある。確定申告より多かったことは認められるが、その金額が把握できないという場合、賃金センサスの平均賃金又はその一定割合を基礎に休業損害金を認める裁判例が多い。
クラブホステスの事業所得が多いとして主張立証をしても、十分ではないとされ、賃金センサスの平均賃金を基礎に休業損害金を算出された東地判平6.12.9や、赤字申告者で、賃金センサスの平均賃金の2/3をもって休業損害金とした名古屋地判平4.7.29などがある。

3 開業準備段階の場合
男子労働者学歴計年齢別平均賃金によった裁判例(横浜地判平5.3.29)がある。

4 経費
⑴ 固定経費は控除しない
売上額から原価と経費を引いて事業所得を計算するが、経費のうち、固定経費は、休業中でも必要になる経費なので、控除しなくともよい。
5 売上高利益率
信頼できる統計資料から、売上額を基準にこれに利益率をかけて事業所得を計算する方法もあるとされている。

6 夫婦で自営業を営んでいる場合
衣料品の卸業で、利益の7割(3割は妻の利益分)とした裁判例(大阪地判平5.4.8)などがある。なお、妻を事業専従者として申告しているケースで、申告所得額に事業専従給与額を加えた金額を事故前の事業所得として休業損害金を算出した裁判例(大阪地判平5.1.12)がある。妻もこの事業所得の確保に寄与している場合は、妻の寄与分は控除されることになろう。

7 代替労働力の確保のために支出した金額も休業損害金に加算
臨時で人を雇い、事業の手伝いをしてもらった場合の人件費などである。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解➁ 知る権利は,法と条例の制限内の権利なり

Q 情報の開示を請求した住民に,公文書のコピーを交付した後,当該住民から,住民には“知る権利”があるのだから...

[ 契約書 ]

情報公開条例の誤解① 説明義務はない

Q 私はA市の情報公開担当課の者ですが,次のような請求に困っています。アドバイスを御願いいたします。1...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ