コラム

2012-05-19

交通事故 5 休業損害金① 給与所得者

1 休業損害金の意味
休業損害金とは、交通事故によって怪我をした被害者が、怪我が治癒するか後遺症の症状が固定するまでの間のうち、休業した期間の、休業による損害金をいう。
⑴ 休業には、遅刻、早退、労働力の低下も含む。
⑵ 期間は、怪我の治癒又は後遺症の症状固定までである。
症状固定後の休業による損害は「逸失利益」(別に解説予定)の中で考慮されることになり、休業損害金にはならない。

2 給与所得者の休業損害金の計算方法
⑴ 通常は事故前3ヶ月の平均賃金を基礎に計算される。保険会社所定の「休業損害証明書」用紙を用いて雇い主に書いてもらう他、前年度分の源泉徴収票(必要に応じて給与明細書)で証明する。
⑵ 休業が賞与・昇給に影響するときは、その減収分も請求できる(大阪地判平6.3.28)。
⑶ 休業損害金から所得税・住民税は控除しなくともよい(所得税法9条他)。
なお、逸失利益についても、計算上税金は控除しなくともよい(最判昭45.7.24)。
⑷ 給与には、基本給の他、各種の手当て(超過勤務手当、皆勤手当等)も含む。

3 休業による就職の遅れ、降格や昇給昇格の遅延による減収
これも当然認められる。
なお、休業による就職遅延が長くなると、それが後遺症の症状固定後に及ぶ場合がある。休業損害金は中間利息を控除しないが、逸失利益は、死亡又は後遺症の症状固定日以後の将来の得べかりし利益の喪失をいい、それを一時金で支払ってもらうので、一定の計算式により中間利息を控除するのが常である。怪我のため大学の卒業が2年間遅れたことにより、平成11年4月から平成13年3月まで就職遅延期間があったが、後遺症の症状固定日は、その間の平成11年9月14日という事案で、東判平16.12.21は、卒業までの2年間の就職遅延による損害金を休業損害金として扱い(したがって中間利息を控除しない)、逸失利益の計算期間を卒業後15年間と判示した。事例として紹介する。
就業規則で定まられた定期昇給分を損害と認めたものに京都地判平14.4.25がある。
4 有給休暇
有給休暇を利用した場合も、当然休業損害金の請求が出来る。この場合の計算は、年収を1年間の日数で割り、これに有給休暇日数を乗じた金額になるという裁判例(名古屋地判平15.3.19・京都地判平23.2.1)と賞与を除く年収を稼働日数(1年間の日数から勤務先所定の休日を差し引いた日数)で割った金額に有給休暇日数を乗じた金額になるという裁判例(東地判平18
10.11)がある。

5 副業収入
副業収入も休業損害金になるが、金額の証明が出来ない場合で、本業の収入が賃金センサスの平均賃金より少ない場合、賃金センサスの平均賃金を基礎に休業損害金を算定した裁判例がある(神戸地判平元.2.21)。

6 退職
交通事故に遭わなければ会社に勤務し続けたであろうと認められるときは、休業損害金が肯定される。退職金減収分を休業に付随する損害金と認めたものに名古屋地判平11.9.27がある。

7 有職主婦
給与が賃金センサスの女子労働者平均賃金未満の場合は、主婦としての家事分が加算され、平均賃金が休業損害金とみられ、給与が平均賃金を超えているときは、その実収入が休業損害金とされる(東地判平10.12.9)。

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