コラム

 公開日: 2012-05-13 

施設内事故 2 転倒事故

事例①
施設に短期入居していた高齢者が食堂で車いすから転倒し受傷

事実
88歳で軽度認知症。杖なしでは安定して歩けないのに、自ら車いすから立ち上がろうとすることが多くはなかったが、これまでもあった。事故直前他の利用者と談笑していて立ち上がる気配なし。食堂には入居者が71名もいた。

施設の責任を否定
施設は、具体的に立ち上がる等転倒の危険がある状況を把握したときに適切な処置をとれば足りる。常時監視義務はない。車いすから立ち上がろうとして転倒することは予見できたが、その可能性は高度とはいえない。生命身体の危険について一般的には予見可能性があっても、直ちに結果回避のためのあらゆる手段をとらないといけないわけではない。一時的離席の際にシートベルトを着用させる義務もない。他の事務の合間に状態を監視しておれば足りる。本件では必要な監視はしていた(神戸地裁平14.10.2判決)。

事例② 医院でデイケアを受けていた高齢者が医院の送迎バスを降りた直後に転倒して骨折し、その後肺炎を起こして死亡
事実
78歳。貧血状態で体重も減少傾向にあった。道路が一部未舗装で足場の良い場所ではなかった。自力歩行が可能で簡単な話なら理解可能。送迎バスには介護士1名のみだった。

施設の責任を肯定
移動の際に常時介護士が目を離さずにいることが可能となるような態勢を取るべきであったのに、それを怠った。本人の死亡までの責任がある(東京地裁平15.23.20判決)。

事例③ 通所介護サービスを受けていた高齢者が静養室入り口の段差から転落し右大腿骨骨折。

事実
95歳。両膝関節変形性関節症のため歩行困難で転倒の危険があることを家族から聞いていた。視力障害があり、認知症であった。レクリエーション時や尿意を催したときなど自ら立ち上がって歩行を開始することが度々あった。本人は、静養室で寝ており事故直前の予兆は特になかった。介護士は本人に背を向けて座っていた。そのような中で、本人が寝起きして歩行を開始し、段差のために転倒した。

施設の責任を肯定
本人の動静と寝起きの際の状況を把握する義務があった。つまり、目を覚まして移動を開始したようなときは、すぐに気づいて対応できる状態で見守りをする義務があったのにそれを怠った福岡地裁平15.8.27判決)


事例④ 介護老人施設でデイサービスを受けていた高齢者が便所で転倒し受傷。

事実
杖を使って歩行していた。トイレの入り口から便器までは1.8m、横幅1.6m。壁に手すりがない。介護士の同行を拒否した。

施設の責任を肯定
杖を使って歩行していたのであるから、転倒することは予見できた。利用者から同行を拒絶されても、介護義務者は介護を受けない場合の危険性と介護の必要性を専門的見地から意を尽くして説明し、介護を受けるよう説得して歩行を介護する義務があった(横浜地裁平17.3.22判決)。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
宅建業者(売主)が不動産売買契約を結ぶ場合の特約の有効性

1 中古住宅販売の売買契約(1)瑕疵担保免責約款  ア 買主が宅建業者の場合 有効  イ 買主が個人...

[ 不動産 ]

宅建業者(売主)がする売買契約締結等の時期の制限

宅建業法36条1項は、「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に...

[ 不動産 ]

大切にしたいもの 徳義

正直であること、嘘をつかないこと、ごまかさないことは、人が人として生き抜くうえで、最も重要な徳目であると思...

[ 大切にしたいもの ]

大切にしたいもの 友

 刎頸(ふんけい)の友という言葉があります。その友のためなら、たとえ首を切られても、悔いないくらいの友、と...

[ 大切にしたいもの ]

不動産の売買に伴い、LPガス供給に関する契約を、買主に承継させるための契約条項

これは、LPガス供給に関する契約上の地位を、不動産の買主に譲渡する契約になります。不動産の売買契約を媒介...

[ 契約書 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ