コラム

2012-03-19

間違えやすい法令用語 35 誤解の多い、時効中断事由としての「催告」

1 時効中断事由
民法147条は、
「時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 一 請求
 二 差押え、仮差押え又は仮処分
 三 承認 」
と規定しています。

2 請求の意味
民法147条の「請求」すなわち時効中断事由としての「請求」は、裁判上の請求をいいます。
その具体的な内容として、民法149条に「訴え」、150条に「支払督促」、151条に「和解及び調停の申立て」152条に「破産手続参加等」についての規定が置かれています。

3 催告の意味
催告とは、裁判外の請求のことをいいます。
ですから、催告は、民法147条の「請求」ではありません。
ですから、「催告」は時効中断事由ではありません。

4 催告の効果
 催告は、それ自体、時効中断事由ではありませんが、時効期間を最大6ヶ月間延長できる効果があります。
すなわち、民法153条は、「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」と規定しているのです。


5 実務上多い誤解
 「毎月1回、請求書を送っているのだから、我が社の債権は、消滅時効にはかからないのでしょう。」という質問は、しばしば受ける質問ですが、これは誤解です。
 催告は、1回に限り、時効期間を最大で6ヶ月間延長できる効果しかないのです。

6 説例
 甲は乙に対し、消滅時効期間が2年間の債権を有し、その弁済日は平成22年1月31日という、ケースで考えてみます。
 時効期間は、その債権の弁済日の翌日に開始しますので、甲の乙に対する債権は、平成22年2月1から平成24年1月31日までの間に、弁済を受けないと、1月31日の経過によって、時効で消滅してしまいます。
 そこで、甲は、催告の効果の誤解から、催告に時効中断の効果があると思って、乙に対し、平成22年2月から毎月欠かさず、その月の末日までには乙に配達されるように、請求書を送り続けたとします。
そして、平成24年1月に郵送した請求書は、平成24年1月25日に配達されたとします。
同年2月も25日に、同年3月は19日に配達されたとします。

7 質問
 説例を前提とした場合、甲の乙に対する債権は、本日現在すなわち平成24年3月19日現在、時効で消滅しているでしょうか?まだ時効で消滅していないとすれば、いつ時効で消滅するのでしょうか?

8 回答
  甲の乙に対する債権は、平成22年1月31日が弁済日なので、催告をしていなければ、その日から2年後の平成24年1月31日が経過した日に時効で消滅していることになりますが、説例では、この間すなわち平成22年2月から平成24年3月までの間、甲は乙に対し毎月1回請求書を送って催告をし続けておりますので、これら26通の請求書の内、本来の時効期間の中で最も遅く配達された請求書、すなわち、平成24年1月25日に配達された1通のみが、その翌日から6ヶ月が経過するまで、甲の乙に対する債権の時効期間が延長されるという効果を生じさせています。
しかし、この場合でも、その日から6ヶ月目の平成24年7月25日までに、甲が乙に対し訴訟を起こすなどをしない限り、その債権はその日が経過すると時効で消滅してしまうことになります。

なお、催告は、到達日時が簡単に証明できる内容証明郵便ですべきです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

9

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
読みはあっても,公用文では書かない漢字の例

次の語は,一般の人が漢字で書いても,違和感を持たれないのではないかと思われますが,公用文では, → の右に書い...

[ 公用文用語 ]

「私達」か「私たち」か? 「友達」か「友だち」か?

正解は,「私たち」と「友達」です。「私たち」の「たち」は,「私ども」の「ども」と同様,接尾語です。接...

[ 公用文用語 ]

「~にも拘わらず」か,「~にも関わらず」か,「~にもかかわらず」か?

正解は「~にもかかわらず」です。これは,接続詞の「したがって」が,漢字で「従って」と書くのではなく,平仮...

[ 公用文用語 ]

読みが「そのほか」である語句を, 「その外」と書くか,「そのほか」と書くか?

公用文では,「そのほか」と書くのが正解になります。「その外」と書くと,「外」は当て字になるからであると考...

[ 公用文用語 ]

金融機関は遺言書とどう向き合うべきか?① 遺言書の形式

 預金者が亡くなり,その預金を相続し,又は遺贈を受けたという者が,遺言書を持って,金融機関の窓口に現れた場...

[ 相続相談 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ