コラム

 公開日: 2011-08-30  最終更新日: 2012-08-17

間違えやすい法令用語 30 適用・準用・類推適用

1 適用の意味
 「適用」とは、法律を、個別的、具体的に特定の人、地域、事実、事項等について当てはめていく作業をいいます。
 例えば、甲が、他人の土地を「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有した」場合、それは、民法162条の「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」という規定を適用できますので、時効取得ができることになります。

2 準用の意味
 「準用」とは、「ある事項に関する規定を、他の類似事項について、必要な修正を加えつつ、あてはめること」をいいます。
例えば、民法165条は「前条の規定は、163条の場合について準用する。」と定めています。
ここでいう「前条」とは、所有権に関する事項中断事由を定めた規定です。
そして、「163条の場合」というのは、所有権以外の財産権について取得時効が認められる場合のことです。
ですから、民法165条の「前条の規定は、163条の場合について準用する。」という意味は、所有権に関する時効中断事由は、所有権以外の財産権に関する時効中断事由でもあるという意味になるのです。

 本来なら、民法165条は164条と同じように条文にしてもよいのですが、同様の規定を繰り返さないという立法技術上の必要から、「準用する」という規定が置かれるのです。

準用規定の中には、解釈の明確を期すため読替え規定が設けられることが結構あります。
例えば、民法808条は「第747条・・・は、縁組について準用する。この場合において、第747条第2項中「3箇月」とあるのは、「6箇月」と読み替えるものとする。」という具合にです。

3 類推適用
 「類推適用」とは、類似した事柄(甲)について適用できる条文(A)はあるが、その事柄(乙)については適用する条文(B)がなく、また「条文(A)を準用する」という準用規定もない場合であっても、事柄(乙)に条文(A)の趣旨を適用することが望ましいと考えられるとき、解釈によって、事柄(乙)に対し条文(A)を適用することをいいます。
 例えば、地方自治体である市の市長が、市の代表者として、その市長が代表者になっている財団法人と契約を結ぶ行為(ここでは「双方代表行為」といいます)は、双方代理行為に類似しますが、双方代理は民法108条で禁じられているのに、市長の双方代表行為を禁ずる規定はなく、また、市長の双方代表行為に民法108条を準用するという規定もありません。
しかしながら、名古屋高等裁判所平成11年12月27日判決は、「地方公共団体の長は・・・契約に当たり、同時に、契約の相手方をも代表してその利益を図る立場に立つ・・・は、相手方の利益を図る結果、地方公共団体の利益を損なう危険があるから、・・・民法108条の類推適用により、その契約の効力は直ちには地方公共団体に帰属しないものと解される。」と判示したのです。

4 準用と類推適用
「準用」が、原則として、法により他の条文を「準用する。」との規定がある場合、「類推適用」は、そのような根拠規定がなく、解釈により、他の条文を適用する場合になります。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

8

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
割増賃金の定額化に関する判例後の通達

すでに本コラムで紹介しました割増賃金の定額化に関する、最高裁判所平成29年7月7日判決を踏まえた通達が、同月31...

[ 労働 ]

大切にしたいもの 一能

吉川英治が描く、「私本太平記」の中に、楠正成が、一人の仮面師(めんし=鑿(のみ)を使って人の顔をつくる者) ...

[ 大切にしたいもの ]

特別の利害関係のある取締役が、取締役会決議に関わった場合の取締役会決議の効果

問題会社法369条は「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定め...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

就業規則の一括届出制度について

1 就業規則の届出義務は、事業場ごとに。労働基準法89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に...

[ 労働 ]

我がコラムへのご訪問、ありがとうございます

昨日の私のコラムへの訪問者数は3400名、閲覧コラム総数は6586通でした。訪問者数では、過去最高を越え...

[ その他 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ