コラム

 公開日: 2011-08-24  最終更新日: 2012-08-17

間違えやすい法令用語 26 原本・謄本・正本・副本・抄本

1 原本の意味
「原本」とは、文書の作成者が作成した文書そのものを指します。要は「オリジナルの文書」です。
民事訴訟法252条は、「判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。」と定めています。判決書の正本や謄本では、言い渡しはできません。

2 謄本の意味
「謄本」とは、「原本」と同一の文字・符号を用いて、「原本」の内容を完全に写し取った書面のことをいいます。要は「全部の写し」です。
謄本は、原本の存在とその記載内容の全部を証明するために作られるものです。
戸籍謄本や登記簿謄本がありますが、戸籍謄本は、戸籍簿に編綴された文書である戸籍と同じ内容がすべてが書かれた文書です。この場合、戸籍簿に編綴された文書が原本です。

3 正本の意味
⑴ 正本は謄本の一種
「正本」とは、「謄本」の一種ですが、とくに法律によって、原本の作成権限のある者が、「原本」に基づきとくに「正本」として作成し、外部に対しては「原本」と同一の効力をもって通用する文書をいいます。
例えば、判決正本です。
民事執行法25条本文は「強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。」と規定していますが、債務名義の1つである判決の原本は裁判所に保管され、当事者が強制執行のためにそれを執行裁判所や執行官に提出するということができないために、正本を提出することで強制執行がなされることになっているのです。


⑵ 抄録正本
「正本」は「原本の一部」について作成されることもあります。
例えば、公証人法49条1項は「・・・有用ノ部分及証書ノ方式ニ関スル記載ヲ抄録シテ其ノ正本ヲ作成スルコトヲ得」と規定して、「抄録して正本を作る」ことを認めているのです。
この「抄録して」作られた「正本」は、同条2項で「前項ノ正本ニハ抄録正本タルコトヲ記載シ・・・」と規定されているように、「抄録正本」と呼ばれます。

4 抄本の意味
「抄本」とは、「原本」の一部について、原本と同一の文字・符号を用いて、これを写し取った書面のことをいいます。要は「一部の写し」です。
原本のうち必要な部分を証明するために作られるものです。
戸籍抄本や登記簿抄本があります。

5 正本と副本という場合
「正本」が「副本」に対する言葉として使われることがありますが、この場合は、「正本」も「副本」も同じ「原本」あるいは「謄本・抄本」になります。

⑴ いずれも「原本」である場合
例えば、戸籍法8条1項は「戸籍は、正本と副本を設ける。」と規定して、同条2項で「正本は、これを市役所又は町村役場に備え、副本は、管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局がこれを保存する。」と規定しています。
これらは同じ文書ですが、いずれも原本です。
どこかに原本があって、市役所や法務局に、謄本である「正本」を置いておくというものではありません。

⑵ いずれも「謄本」・「抄本」である場合
民事訴訟の場で、文書を証拠として提出する場合、裁判所と相手方には、原本に基づき写し取った「謄本」・「抄本」を提出しますが、この場合裁判所に提出する「謄本」・「抄本」を「正本」、相手方に公布する「謄本」・「抄本」を「副本」といい表しています。これらは、いずれも「謄本」あるいは「抄本」です。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

9

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
遺産分割の場合の注意 「課税価格」イコール「相続税評価額」ではないこと

1 遺産の評価問題遺産分割の調停の席で,遺産(相続財産)の評価をどうするかという問題が提起されることがあ...

[ 相続相談 ]

遺留分減殺請求事件と相続税の処理

1 遺留分減殺請求をして,相続財産の一部の返還又は価額弁償金の支払を受けた遺留分権利者甲の場合これによっ...

[ 相続相談 ]

情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解③ 助言義務は説明義務に非ず

Q 当市の公開条例には,第3条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有す...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ