コラム

2011-08-01

間違えやすい法令用語 21 善意と悪意

1 一般的な意味
善意とは「善良の心、他人のためを思う心、好意」などを意味し、
悪意とは「人を憎み害を加えようとする邪悪な心」を意味しますが、
法律用語としての意味は違います。

2 「善意」の法律上の意味
「善意」とは「知らないこと」です。

例:債権譲渡について
⑴ 民法466条1項本文は「債権は、譲り渡すことができる。」と定めています。この規定により、①通常の債権は、債権譲渡契約を結ぶと、有効に債権が譲受人に移転することになります。
⑵ ところが、民法466条2項は「前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。」と定めていますので、②当事者が「債権譲渡禁止の特約」を結んでいると、債権譲渡は無効になり、債権の移転はできないことになります。
⑶ しかしながら、この2項にはただし書きがつけられており、「ただし、その意思表示(筆者注:債権譲渡禁止の特約の意味)は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めていますので、債権の譲受人が、債権譲渡禁止の特約を結んだ債権を、それと知らないで、譲り受けると、有効になるのです。

この場合の「善意」は、「債権者と債務者間で債権譲渡禁止の特約を結んでいたことを知らなかった」ことを意味します。

3 「知らなかった」場合でも、「重大な過失によって知らなかった」ときは、善意とは見られないことがある
最高裁昭和48.7.19判決は、債権譲渡禁止特約が結ばれていることを知らなかった譲受人であっても、「知らなかったことについて重大な過失」があるときは、債権を譲り受けることはできない、と判示していますので、知らなかったことについて重大な過失があるときは「善意」とみられない場合があるのです。

3 「悪意」の法律上の意味
一般には、「悪意」とは「知っていたこと」を意味します。

例:不当利得返還義務の範囲
民法703条は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と定めていますが、これは、法律上利益を受ける権利がないのに、他人の財産や労務のおかげで利益を受けた者(受益者)は、その利益が存する限度でよいから、それを返しなさいという規定です。

しかし、法律上利益を受ける権利がないことを「知っている」受益者まで、返還義務の範囲を「利益の存する限度」とするのは、公平ではありません。
そこで、民法704条は「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と規定しています。
この場合の「悪意」とは、受益者が「法律上利益を受ける権利がないのに、他人の財産や労務のおかげで利益を受けたことを知っていること」を意味します。

4 離婚原因としての「悪意の遺棄」でいう「悪意」は「害意」を意味する

民法777条は、「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

と規定していますが、離婚原因の二号の「悪意の遺棄」とは、「積極的な意思で夫婦の共同生活を行わないこと」と解されています。たんに共同生活を行わないだけでは悪意の遺棄にはなりません。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
「~にも拘わらず」か,「~にも関わらず」か,「~にもかかわらず」か?

正解は「~にもかかわらず」です。これは,接続詞の「したがって」が,漢字で「従って」と書くのではなく,平仮...

[ 公用文用語 ]

読みが「そのほか」である語句を, 「その外」と書くか,「そのほか」と書くか?

公用文では,「そのほか」と書くのが正解になります。「その外」と書くと,「外」は当て字になるからであると考...

[ 公用文用語 ]

金融機関は遺言書とどう向き合うべきか?① 遺言書の形式

 預金者が亡くなり,その預金を相続し,又は遺贈を受けたという者が,遺言書を持って,金融機関の窓口に現れた場...

[ 相続相談 ]

モデルルームでの不動産売買契約とクーリングオフ

Q 当社は,某宅建業者がマンションを建築販売する話を聞き,モデルルームを見学に行き,その場で投資用にマンシ...

[ 不動産 ]

開発許可にかかる工事を完成し検査済証を交付された後でも,開発行為取消訴訟は起こしうる(判例)

Q 市街化調整区域で開発許可の要件を欠いた業者が,開発許可を受け開発行為に関する工事を完了し検査済証を交付...

[ 不動産 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ