コラム

 公開日: 2011-06-02  最終更新日: 2014-05-26

間違えやすい法令用語1 「施行する」・「適用する」

1 制定・公布・施行・適用
法律は、国会での議決を経て制定されますが、それに法規範としての効力(日本国民が法的に拘束を受ける効力)を与えるためには、それが公布された上、施行される必要があります。

2 施行の意味
法律の施行とは、「制定・公布されたがまだ未発動の状態にある法令を現実に働き出す状態に置くこと」(ぎょうせい発行:田島信威著「最新法令用語の基礎知識」486ページ)をいいます。

3 施行日
 「法の適用に関する通則法」第2条で「法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる。」と規定していますので、法律に施行日に関する規定がないときは、公布の日から20日間を経過した日に施行されることになりますが、ほとんどの法律は、別に施行日が決められるか(この場合は附則に施行日が書かれるようになります)、政令に施行日を決めることを委任しています。

なお、「条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。」(地方自治法16条3項)ことになっています。

4 珍しい現象
 法律の施行は法律の公布後になるのは当然ですが、国税通則法(昭和37年法律第66号)は、附則1条で「この法律は、昭和37年4月1日から施行する。」と規定しているのに、この法律が成立し公布されたのは、昭和37年4月2日です。
公布の1日前を施行日にしているのです。

これは、4月1日を施行日にする予定で付則1条に施行日をあらかじめ4月1日と書き込んで法案を提出したものの、国会で紛糾し、審議が遅れ、4月2日に制定・公布されたためです。途中施行日に関する附則1条を「4月2日」に変更する方法もあったと思われますが、そうなれば「法案の修正案」を提出し、すでに可決していた衆議院に回付しなければならないということになり、そうすればさらに成立が遅れるという事情もあったのではないかと思われます。

5 公布前の施行日の解釈
法律が公布されていないのに、施行することは物理的に不可能です。
そこで、この国税通則法附則1条の「この法律は、昭和37年4月1日から施行する。」との言葉は、「この法律は、昭和37年4月2日から施行し、同年4月1日から適用する。」と解釈されているのです(前掲「最新法令用語の基礎知識」)。

6 適用
「適用する」とは、「法律の規定を個々具体的な場合について、特定の人、特定の事項、特定の地域に関して実際にあてはめその効力を現実に働かせること」をいいます(前出「最新法令用語の基礎知識」)。別の言い方をすれば、法律の施行後において、法律を具体的な対象にあてはめることを言います。

7 施行は遡れないが、適用は遡ることが可能
施行は遡ることは出来ませんが、適用は過去に遡らせることは可能です。これを「遡及的適用」といいます。もっとも、人権擁護の観点から、刑法の遡及的適用は原則としてできません。

8 自治体の条例や規則、会社の定款、規則も同じ
ところで、この施行と適用は、法律、政令、省令、条例は言うまでもなく、会社の定款や、規程、規則 など、法的な拘束力を持つすべての法規範に妥当しますが、意外に多いのが「施行」と「適用」の用語の使い方の間違いです。

会社で給与規程の制定や変更をする場合、過去に遡って適用したいと考え、制定や変更は、例えば平成23年6月2日なのに、給与規程の附則に、例えば「この規程は平成23年4月1日から施行する。」と定めるようなことが結構多いのですが、これは間違いです。正しくは、附則には「この規程は平成23年6月2日から施行し、平成23年4月1日から適用する。」と定めるべきです。

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