コラム

2011-05-21

相続 183 相続三態① 相続の単純承認

1 相続の単純承認とは?

民法920条は「相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」と定めていますが、これが単純承認の意味です。
ここで「無限に」というのは、すべての相続財産を承継する、という意味ですので、相続財産の中の資産より負債が多い場合は、相続人は、自己固有の財産をもって債務の支払をしなければならなくなります。

2 単純承認をしたとみなされる場合

民法921条は「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」と定めていますが、これを「法定単純承認」といいます。その内容は、①ないし③です。
①相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

【解説】これは相続の開始を知って、財産の処分をしたときをいいます。相続開始の事実や自分が相続人になったことを知らないで財産を処分した場合は、これには該当しません(最判昭和42.4.27)。

なお、大阪高決平成14.7.3は、「被相続人に財産があるときは、それをもって葬儀費用に充当しても社会的見地から不当ではなく、それを遺族が仏壇等に充てることは自然な行動であり、貯金を解約して仏壇等の購入費用に充てた行為は、民法921条1号の「相続財産の処分」に当たるとは断定できないとして、単純承認を認めた原審判を取消し、抗告人らの相続放棄の申述を受理しました。

②相続人が第915条第1項の期間内(注:自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

【解説】この場合は、相続人は何らの意思表示をしないでも、3ヶ月経過すると、当然に単純相続をしたという効果が生じます。しかし、単純承認も、限定承認や相続放棄と同じく、相続人の意思表示により効果が生ずるとする意思表示説が判例です。そのために、③の【解説」で述べるような裁判例が存在するのです。

③相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

【解説】単純承認も意思表示で効果が生ずるとの見解(意思表示説)がとられるところから、単純承認事由に該当する財産処分行為をした場合でも、多額の相続債務のあることを知らなかった場合は、要素の錯誤に該当し、法定単純承認の効果も発生しないので、その後(負債があることを知った時から3ヶ月以内)に相続放棄が出来るとした裁判例(大阪高決平成10.2.9)があります。


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