コラム

 公開日: 2011-05-05  最終更新日: 2011-05-06

相続 166 遺言の解釈① 解釈の指針と「後継ぎ遺言」

1 遺言の解釈
法律家でない人が書いた遺言の内容が、一義的に明確と言い難いとき
そのようなときに、遺言の解釈が問題になります。

2 遺言の指針を明示した最高裁判例
最判昭58.3.18は、原審が「跡継ぎ遺贈」は無効であると判示した事案で、遺言者の真意をさらに探れとして、その件を原審に差し戻し、遺言の解釈の指針を明示しました。
すなわち、この事件は、遺言者が、「妻にある不動産を遺贈する。」(第1次遺贈)と書いた後、「妻の死亡後は、兄弟姉妹に・・・の割合で、権利分割所有する。」(第2次遺贈)旨書いたものでしたが、原審は、遺言者には、妻に遺贈した後妻が死亡した後のことまで相続財産を処分する権限はないことから、第1次遺贈は有効だが、第2次遺贈は、単に遺言者の希望を書いたに過ぎないもので無効であると判示したのですが、最高裁は、3で述べるような遺言の解釈指針を明示して、「妻に、その不動産を遺言者の兄弟姉妹に移転すべき債務を負担させた負担付き遺贈」と解するか、また、「兄弟姉妹らに対しては、妻死亡時に本件不動産の所有権が妻に存するときには、その時点において本件不動産の所有権が兄弟姉妹らに移転するとの趣旨の遺贈」であると解するか、更には、「妻は遺贈された本件不動産の処分を禁止され実質上は本件不動産に対する使用収益権を付与されたにすぎず、兄弟姉妹らに対する妻の死亡を不確定期限とする遺贈」であると解するか、の各余地も十分にありうるので、原審としては、本件遺言書の全記載、本件遺言書作成当時の事情などをも考慮して、本件遺贈の趣旨を明らかにすべきであつたといわなければならない、として原審判決を破棄し、事件を検針に差し戻したのです。

3 遺言書の解釈指針
前記最高裁判決は、「遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」というものです。

4 その後の最高裁の判決にも引用される有名な判決
この判決は、その後、最高裁判所判決の中にも多く引用され有名な判決になりました。遺言の解釈指針として確定した判決と言えます。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

独禁法って何だ?1 独禁法・公取委・課徴金

1 独禁法「のう、後藤よ!独禁法って何だ?」「独禁法は略称でなあ、正しくは“私的独占の禁止及び公正取引の...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法
イメージ

【補説】単純型というのは、生前贈与も遺贈も寄与分もない場合のことです。単純型は、遺産の額に、法定相...

哲学とは何?

 ここまでに、徳川家康の残した処世訓のこと、法の箴言のこと、を書いてきたが、処世訓も箴言も、実に意味深い言...

[ 格言や歴史上の偉人の言葉に学ぶ ]

第2章 1遺産分割 1遺産分割とは(3)遺産分割内容を決める二つのステップ
イメージ

【補説】相続人間で、順を追って、具体的相続分を算出し、その具体的相続分に見合う遺産をどのように分割取...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ