コラム

 公開日: 2011-05-02 

相続 163 寄与分を定める遺言は無効だが、持戻し免除の意思表示のなされた遺贈と見られる余地はある。

1 遺留分を定める遺言事項は認められていない
被相続人が生前遺言によって定められることは、法律上根拠規定が置かれています。
次の①から⑮までですが、⑯は裁判上認められています。
① 推定相続人の廃除・取消(892~894)
② 相続分の指定・指定の委託(902)
③ 特別受益の持ち戻しの免除(903③)
④ 遺産分割の方法の指定・指定の委託(908前段)
⑤ 遺産分割の禁止(908後段)
⑥ 共同相続人の担保責任の減免・加重(914.911)
⑦ 遺贈の減殺の順序・割合の指定(1034但書)
⑧ 遺贈(964)
⑨ 一般財団法人設立のための寄付行為
  (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律164)
⑩ 信託の設定(信託法3)
⑪ 認知(781)
⑫ 未年者の後見人指定(839①)
⑬ 未成年後見監督人の指定(848)
⑭ 遺言執行者の指定・指定の委託(1006①)
⑮ 祖先の祭祀主宰者の指定(897① 但書)
⑯ 生命保険金受取人の指定・変更(東京高裁平成10年3月25日判決)

2 寄与分は遺言事項にはない
遺言で寄与分を定めことは法律上予定されていません。
しかし、これを無効とするのは、遺言者の意思に反します。
そこで、寄与分を定める遺言は、遺言者が、相続財産の中から、寄与相続人に対し、遺言者が考える寄与分を遺贈し、その遺贈財産は持戻しを免除する意思があると表明したものと考えられることになります。

3 寄与分の遺言文例と遺贈の遺言文例の比較
寄与分:
遺言者は、長男がよく遺言者の家業を助けかつ遺言者の療養看護に尽くしてくれたので、長男の寄与分を全遺産の20%と定める。
遺贈:
遺言者は、長男がよく遺言者の家業を助けかつ遺言者の療養看護に尽くしてくれたので、全遺産の20%を遺贈する。この遺贈分については持戻しを免除する。

4 寄与分の定めを無効とするのは不合理
前項の寄与分と遺贈とは、趣旨は同じです。遺言者は、法律家でないので、3項の寄与分を定める遺言は法律上の根拠がないので無効になり、遺贈は法律上根拠があるので有効になる、とは考えないでしょう。

5 遺言は意思解釈の問題
遺言を書くのは法律家ばかりではありません。正確な法律用語を用いて遺言書を書くことを期待すべきではないのです。そこで、遺言の解釈がなされるのですが、本件もそうなのです。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
宅地建物取引業者の税金についての説明義務

 宅地の売買などをしますと,不動産譲渡所得課税問題が生じますが,その売買契約を仲介した宅地建物取引業者に,...

[ 不動産 ]

遺産分割に関する最高裁判決まとめ

・預貯金債権は,可分債権ではないので,遺産分割対象の財産になる(平成28年12月19日最高裁判所大法廷決...

[ 相続判例法理 ]

遺産から生ずる果実は,全相続人のもの

最高裁判所第一小法廷平成17年9月8日判決遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理 「遺産分割による代償譲渡」は有効

法務局で登記手続をする場合,先例がないときは,容易に認めてもらえません。下記の事案も,そうで,家庭裁判所で...

[ 相続判例法理 ]

遺産分割判例法理⑦ 財産全部についての遺産の分割の方法を定めた遺言は債務に及ぶ 

 民法899条は,「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」と規定していますが,ここ...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ