コラム

 公開日: 2018-07-08  最終更新日: 2018-07-10

ウインストン・チャーチルに学ぶ⑧ 歴史を見る冷徹な目

第二次世界大戦発生の原因
 1 勝者の愚行
 チャーチルは、戦後彼が書いた「第二次世界大戦」(随想録)に、第二次世界大戦を引き起こした原因の第一に「勝者の愚行」を挙げています。
ここでいう「勝者」とは、第一次世界大戦の勝者のことです。
チャーチルは、①第一次世界大戦が終わった後に結ばれたベルサイユ平和条約の領土条項で、事実上ドイツの領土を元のままに残したこと(これをフランスのフオツシュ元帥が知ったとき、「これは平和ではない。二十年間の休戦だ。」と予言しています。)と、②経済条項で、チャーチルがいうところの有害で無益な、敗戦国ドイツに押しつけた支払能力をはるかに超えた過酷な賠償金を問題点として取り上げています。
前者①は寛大にすぎ、後者②は過酷にすぎた点を取り上げているのです。
前者①については、フランスが、過去何度かドイツ(プロイセン)から攻められ、その都度おびただしい人命を失ってき、ドイツに対する根強い恐怖心をもってきていたことから、第一次世界大戦の後は、ドイツの領土をライン川以東にするよう要求していたのを、米英に拒否されたこと(その代わり、ライン川以西のドイツ領であるラインラントは非武装地帯にした。しかし、後、簡単にドイツ軍が軍隊を入れた。)を指しているのです。
後者は、第一次世界大戦の戦勝国、特にフランスの国民のドイツに対する怒りを満足させるため、ドイツの支払能力をはるかに超える賠償金を課したこと、その結果1919年から23年にかけてなされたマルクの暴落とドイツの紙幣の増刷がハイパーインフレを引き起こし(マルクは英貨1ポンドに対して43兆マルクにまでに暴落)、ドイツの中産階級の貯蓄はゼロと化し国民の、また、国家の経済が破綻したこと、それらの責任はユダヤ人と共産主義者にあるとする激しい憎悪の念を掻き立てるナチズムが台頭したことなどを指しているのです。
このような結果からか、チャーチルは、第一次世界大戦の戦勝国がとった処置を「勝者の愚行」と名付けています。
そして、チャーチルは、第二次世界大戦ほど防止することが容易だった戦争はかつてなかった。もし、第一次世界大戦の戦勝国に、正しい確信に根ざした不動の信念、理にかなった常識、思慮分別さえあれば、第二次世界大戦を起こさせることはなかったはずだ。第二次世界大戦を引き起こした原因は、第一次世界大戦の戦勝国自身、「慎重とか自制とか中道」という名のきれいごとを並べただけのベルサイユ平和条約を結ぶことで事足りると考え、真に必要な安全保障の確立を怠ったことにあった旨述べているのです。
 
 そして、チャーチルは、具体的な安全保障の施策として、ドイツを30年の間非武装のままにし、勝者がそれ相応に武装しておくべきであった。これは簡単にできたことだ。と書いているのです。
 ところが、実際に戦勝国のしたことは、ドイツの領土は事実上そのままとし、ドイツに陸軍10万人を限度に軍隊を認めながら、戦勝国自身は戦艦を沈め、軍事施設を破壊し、兵隊の数を減らしたのです。
 1921年ワシントン会議で、英米両国は、“勝者の武備を取り除かない限り、敗者の武備を説くのは道義に反する”と説明していますが、これなど余りに観念的なきれい事というべきことかもしれません。

 その結果、フランスなど、常備軍50万人を20万人に減らされているのです。そのため、フランスは、第一次世界大戦の勝者でありながら、隣国のドイツにいつまた攻め込まれるかわからないという恐怖心をもって生活せざるを得ないという状況におかれたのです。その後、この恐怖心は、現実の死という惨害になっていったこと、歴史のとおりです。

2 ウインストン・チャーチルの偉大さ
第二次世界大戦の発生原因については、見る人の立場などで違いはあるでしょうが、戦勝国の首相であり、最も激しく戦意を燃やしてナチス・ドイツと戦ったウインストン・チャーチル自身が、その発生原因の一つとして、自分たち第一次世界大戦の勝者の「愚行」を挙げたことには驚きます。
ここに、冷徹かつ公正なな目で、歴史を見続けてきた、ウインストン・チャーチルの偉大さを感じます。

ご相談は弁護士法人菊池綜合法律事務所へ!

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
一 将の能にして・・・⑥ 漢の軍は、人材の淵藪であった。

漢の軍は、人材の淵藪であった。 淵藪とは、「淵」が魚の寄り集まる場所、「藪」が鳥獣の寄り集まる場所をい...

[ 歴史と偉人と言葉に学ぶ ]

一 将の能にして・・・⑤ 大廈の材は一丘の木にあらず

大廈の材は一丘の木にあらず これは「孫子」の言葉ではありません。 意味は、大きい建物の材木は、そのあ...

[ 歴史と偉人と言葉に学ぶ ]

一 将の能にして・・・④ 勝因と敗因

4 勝因と敗因 楚漢の戦いの勝因、敗因は何であったのか? 「将の能にして、君の御せざる者は勝つ」と...

[ 歴史と偉人と言葉に学ぶ ]

一 将の能にして・・・③ 垓下の戦い

3 垓下の戦い やがて、舞台は、項羽と劉邦の最後の戦いになった、垓下の戦いに移ります。 項羽が率い...

[ 歴史と偉人と言葉に学ぶ ]

一 将の能にして・・・②張良、韓信、陳平、蕭何

 次に韓信がいます。 彼は軍事の天才です。故事成語にまでなった背水の陣を敷くなど、それまでの常識を覆...

[ 歴史と偉人と言葉に学ぶ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ