コラム

 公開日: 2017-05-11 

日弁連・千年の光、百年の闇⑤ 日弁連の論、内外に敵あり

1 内なる敵 日弁連総会の反対
(1) 13年議決の根拠

日弁連懲戒委員会が、遺言執行者は相続人の代理人であるとの考えに基づき、弁護士が
①遺言執行者の地位と
②受遺相続人の代理人の地位
を兼任することは、懲戒事由になるとして、弁護士を懲戒処分にしたのが平成13年ですが、弁護士を懲戒処分にするのに根拠は必要です。

日弁連懲戒委員会が根拠にしたには、当時の倫理規定26条2号でした。
すなわち、遺言執行者になった弁護士が受遺相続人の代理人になって遺留分権利者と争うことは、旧倫理26条2号に違反することだと判断し、それを根拠に懲戒処分にしたのです。

(2)根拠規定を削除
 
しかしながら、日弁連は、平成16年11月10日臨時総会を開き、この26条2号を削除しました。
そしてそれに代わる規定として、新たに28条3号を設けました。
そして、日弁連は、倫理委員会を通して(同委員会発刊にかかる書籍「解説弁護士職務基本規程」の中で)、弁護士が遺言執行者になって受遺相続人の代理人になっても(兼任しても)、遺言執行者の遺言執行が裁量の余地のない場合は、28条3号の懲戒規定には違反しない旨の解釈を公にしました。

 日弁連懲戒委員会が平成13年に下した懲戒処分は、「相続させる」遺言における遺言執行者に対するもので、この遺言における遺言執行者には、裁量の余地はないこと明らかでしたので、日弁連総会のした懲戒規定の改正は、あからさまに平成13年議決に反対したのです。

(3)日弁連懲戒委員会、根拠を変えて、態度を変えず

 しかしながら、日弁連懲戒委員会は、その後も、判明しているだけで,18年、20年、21年及び26年と、兼任した弁護士を、兼任したという理由だけで懲戒処分にしてきているのです。
その根拠は、“遺言執行者は、中立、公正に職務を行う義務があるので、特定の相続人や受遺者の利益を図ることは許されない”という理屈です。

2 外なる敵 法制審議会民法(相続関係)部会・根拠の大本をなくす方向に動く

法務省・法制審議会民法(相続関係)部会は、平成29年1月24日に開催された第17回会議で、民法1015条を削除し、「遺言執行者がその権限内においてした行為の効果は相続人に帰属する」との規定を設ける民法改正案を提案することを決めました。

 この決定は、日弁連懲戒委員会がこれまで遺言執行者になった弁護士を懲戒処分にしてきた根拠の大本をなくすることを意味します。
そして、その跡にあらたに設置しようとする規定は、「遺言執行者がその権限内においてした行為の効果は相続人に帰属する」という規定ですが、この規定は、現行の1015条の意味する内容をそのまま条文化しようとするものです。

この民法改正の動きは、国家的見地からも、日弁連論の悪影響(遺言執行者制度の誤用による弊害)を無視できないと考えたことによるものと思われます。


3 日弁連懲戒委員会内部の反対

日弁連懲戒委員会は、
平成21年の議決では、複数の委員が懲戒処分に反対し、
26年議事録でも、議決書の末尾に
「なお、本件を具体的事実に即して判断するに、遺言執行者には裁量の余地はなく、実質的にみて利益相反の関係は認められないとして、原弁護士会の処分を取り消し、懲戒しないとの議決をするべきであるとする反対意見もある。」
との記載をし、人数は不明ながら、懲戒処分に反対する委員もいることを明らかにしています。

今や、日弁連懲戒委員会の多数派である兼任弁護士懲戒処分推進派は、四面楚歌の状況ですが、今後もなお、兼任弁護士を懲戒処分し続けるのか?今の、遺言執行者実務を正常化する方向に向きを変えるのか?
大きな瀬戸際にあると思われます。

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