コラム

2011-03-09

行政 27 地方公務員に対する分限処分と行政裁量①


1 分限処分
「分限処分」とは、
① 一般職の公務員がその職にあることに適格性を欠く場合(公務員側の事情)、又は
② その職の廃止などにより公務の効率性を保つ必要が生じた場合(任用権者側の事情)
により、その職員の意に反して行われる、降任、免職処分のことをいいます。
いずれも、「公務の効率性を保つために行なわれる処分」です。
分限処分としての降任は「分限降任処分」、免職は「分限免職処分」といいます。
「分限」の「分」は「身分」の分、「限」は「限界」の限の意味で、「身分の限界」を定めて、公務の効率性を保つのです。
分限処分に似て非なるものに「懲戒処分」があります。
これは、公務員の責任を問い、職場内の綱紀粛正を図ることを目的とした処分です。
ですから、分限処分の場合は、免職となった場合でも退職手当(退職金)は支給されます。

2 地方公務員法28条
地方公務員法28条は、
1項で、
 1号 勤務実績が良くない場合
 2号 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
 3号 その外、その職に必要な適格性を欠く場合
 4号 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
には、公務員を、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる、と規定しています。
この規定の分限理由の1号ないし3号が公務員側の事情、4号が任用権者側の事情です。

3 降任と免職
降任とは、現在の職より下位の職に任命する処分をいいます。また、免職とは、その職を失わせる処分をいいます。
いずれも、職員の意に反して行われます。
なお、降任に伴い給料が下がることがありますが、これは降任の効果であって、降給にはあたりません。

4 行政庁の裁量権
問題の公務員を分限処分にするかどうかの判断には、任用権者の裁量権が認められます。

最高裁判所昭和48.9.14判決は、
① 分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められる。
② 純然たる自由裁量に委ねられているものではない。
③ 分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることは許されない。
④ 処分事由の有無の判断についても恣意にわたることを許されない。
⑤ 考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断することも許されない。
と判示しています。

5 司法権の及ぶ範囲
前記最高裁判決は、
① 裁判所の審査権は、任用権者の判断の当不当には及ばない。
② 裁量権の範囲を逸脱した場合又は裁量権の濫用があるときのみ、裁量は違法になり、司法審査が及ぶ。
と判示しています。

6 分限事由としての「その職に必要な適格性を欠く場合」の意味と判断基準
⑴ 意味
前記最高裁は、
公務員が「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、「当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいう」ものと判示しています。
⑵ 判断基準
前記最高裁は、
公務員が「その職に必要な適格性を欠く場合」と判断する場合は、
① 当該職員の外部にあらわれた行動、態度に徴してこれを判断するほかはない。
② その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連づけてこれを評価すべく、さらに当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要がある。
③ 分限処分が降任である場合と免職である場合とでは、前者がその職員が現に就いている特定の職についての適格性であるのに対し、後者の場合は、現に就いている職に限らず、転職の可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性である点において適格性の内容要素に相違がある。
④ その結果においても、降任の場合は単に下位の職に降るにとどまるのに対し、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において大きな差異があるので、
⑤ 免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えない。
と判示しています。

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