コラム

 公開日: 2011-02-27 

相続 138 包括遺贈における遺言執行者の権限


1 特定遺贈と遺産分割方法の指定の異同
特定遺贈の効果は、特定の財産を特定の者(相続人又は第三者)に与えるという点ですが、この効果は、遺産分割方法の指定と同じものです。しかし、特定遺贈を実現するためには遺言執行者の執行行為が必要であることは、本連載コラム「相続135特定遺贈における遺言執行者の権利と義務」で解説したとおりです。そして、遺産分割方法の指定の場合は、遺言執行者の遺言の執行は必要がないことも「相続136遺産分割方法の指定における遺言執行者の権利と義務」で解説したとおりです。
では、包括遺贈の場合は、どうでしょうか?

2 包括遺贈と相続分の指定の異同
⑴ 包括遺贈とは、特定の財産を特定の者に与えるのではなく、財産を特定しないで、相続財産の全部(「全部包括遺贈」の場合)又は総体としての相続財産の一定割合(「割合的包括遺贈」の場合)を、受遺者に与えるものです。これは、特定の相続人に、相続分の全部又は一定割合を与える相続分の指定と同じ効果を持ちます。
しかしながら、相続分の指定の場合は、遺言の執行は必要ありません。相続人が、指定された相続分をもって、遺産分割手続に入ることになるからです。

⑵ では、包括遺贈の場合は?
民法990条には「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と規定されていますので、包括受遺者は、全部包括遺贈の場合、全部の相続財産を取得し、割合的包括遺贈の場合、相続財産を遺贈された割合で相続人と共有して遺産分割手続に入ることになります。

3 包括遺贈と遺言執行者
判例は、包括遺贈の場合も、次のような限度で、遺言執行者の関与を認めています。
⑴東京高裁昭和52.12.19判決は、全部包括遺贈の場合でも、遺言執行者は、受遺者と共同申請人になり、受遺者のために所有権移転登記手続をすべき義務があるので、その登記登記手続の障害になる、他人の権利の登記(この件では相続人が他の相続人に対してした仮処分登記)の抹消登記を求めた上で、受遺者への所有権移転登記手続をすべきであると判示しました。

⑵神戸地裁平成11.6.9決定は、全部包括遺贈の事案で、遺言執行者が、被相続人名義の貸金庫の開扉請求の仮処分申請を認めました。

⑶東京地裁平成13.6.26判決は、割合的包括遺贈のケースで、割合的包括遺贈を定めた遺言の効果は、受遺者が相続人と遺産共有関係になったことで実現しており、後は遺産分割の手続が残るだけで、遺言執行者にはこれらの財産を管理の権限はない。遺言執行者は、不動産の所有権移転登記手続をすることができるだけである、と判示しました。

⑷東京家裁昭和61.9.30審判は、割合的包括遺贈においては、遺言執行者が絶対に必要なものではない。遺言執行者の職務権限は、遺産分割に至るまでの財産の保全、管理に必要な行為に限られる。管理している財産から被相続人の債務を支払う権限はない、と判示しています。

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