コラム

 公開日: 2016-09-07 

給与条例主義の趣旨を明確にした判例

最高裁判所第二小法廷平成28年7月15日判決は,
鳴門競艇従事員共済会(共済会)から鳴門競艇臨時従事員(臨時従事員)に支給される離職せん別金に充てるため,鳴門市が補助金を交付したことが,給与条例主義を定める地方公営企業法38条4項に反する違法,無効な財務会計上の行為であると判示した判例です。

 原審高等裁判所は,「離職せん別金が退職金としての性格を有し,本件補助金の交付が実質的に臨時従事員に対する退職金支給としての性格を有していることは否定できないが,臨時従事員の就労の実態が常勤職員に準じる継続的なものであり,退職手当を受領するだけの実質が存在すること等からすれば,本件補助金の交付が給与法定主義の趣旨に反し,これを潜脱するものとはいえず,本件補助金の交付に地方自治法232条の2の定める公益上の必要性があるとの判断が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるとは認められないから,本件補助金の交付が違法であるということはできない。」と判示したことに対し,
 最高裁判所は,「前記事実関係等によれば,離職せん別金は,離職又は死亡による登録名簿からの抹消を支給原因とし,その支給額は離職時の基本賃金に在籍年数及びこれを基準とする支給率を乗じるなどして算出され,実際の支給額も相当高額に及んでおり,課税実務上も退職手当等に該当するものとして取り扱われていたものである。そして,離職せん別金は,共済会がその規約に基づく事業の一つとして臨時従事員に支給していたものであるが,市が共済会に対し離職せん別金に要する経費を補助の対象として交付していた離職せん別金補助金の額は,離職せん別金に係る計算式と連動した計算式により算出された金額の範囲内とされ,本件における離職せん別金の原資に占める本件補助金の割合は約97%に及んでいたのである。これらの事実に照らせば,本件補助金は,実質的には,市が共済会を経由して臨時従事員に対し退職手当を支給するために共済会に対して交付したものというべきである。
 地方自治法204条の2は,普通地方公共団体は法律又はこれに基づく条例に基づかずにはいかなる給与その他の給付も職員に支給することができない旨を定め,地方公営企業法38条4項は,企業職員の給与の種類及び基準を条例で定めるべきものとしているところ,本件補助金の交付当時,臨時従事員に対して離職せん別金又は退職手当を支給する旨を定めた条例の規定はなく、賃金規程においても臨時従事員の賃金の種類に退職手当は含まれていなかった。また,臨時従事員は,採用通知書により指定された個々の就業日ごとに日々雇用されてその身分を有する者にすぎず,給与条例の定める退職手当の支給要件(前記第1の2(3))を満たすものであったということもできない。
 そうすると,臨時従事員に対する離職せん別金に充てるためにされた本件補助金の交付は,地方自治法204条の2及び地方公営企業法38条4項の定める給与条例主義を潜脱するものといわざるを得ず,このことは,臨時従事員の就労実態等のいかんにより左右されるものではない。 
 以上によれば,地方自治法232条の2の定める公益上の必要性があるとしてされた本件補助金の交付は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであって,同条に違反する違法なものというべきである。」と判示したのです。

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