コラム

2016-08-01

微妙精確を貴ばなければならない職業

誰の言葉か、忘れましたが、「微妙精確を貴ばなければならない職業」という言葉を使った作家がいます。この言葉は、現在の法律家を指している言葉ではありませんが、これは現在の法律家に当てはまる言葉ではあります。

1 微妙な事実を「精確に」
「事実」には無限の広がりがありますが、法を適用する「事実」は、無限の事実の広がりの中のごく僅かな事実です。つまり、その「事実」とは、法律の定める「構成要件」(刑事事件の場合)又は「要件事実」(民事事件)といわれる法律に書かれた要件に、適合するように整理された事実を意味します。
その事実は、証拠によって裁判官が認定するものですが、証拠の取捨選択やその評価しだいでは、犯罪構成要件に該当する事実のない者(すなわち無罪とされる者)が、犯罪構成要件事実に該当する行為をした者(すなわち犯罪者)になり、権利ある者が権利のない者になり、義務なき者が義務ある者にされてしまうことになります。
ですから、事実は正確であるというだけにとどまらず、「精確」でなければならないのです。「微妙精確」とは、微妙な事実だが、精確に認定すべしということなのです。

2 弁護士がこの言葉から学ぶべきことは、ただ一つ、「舞文曲筆をするなかれ」
弁護士の仕事をしていて、常に神経を使わされ、片時も油断できない不愉快な弁護士類型がありますが、その一つが、舞文曲筆を事とする弁護士です。
黒を白と言い、あった事実をなかったと言い、なかった事実をあったと言う弁護士です。

このような弁護士は、法廷でも、証人に対し平気で誤導尋問をしますので、こちらの側から異義を連発することもあります。
相手方弁護士の言に信を置くことができないため、和解率も非常に低いものになります。


3 その正反対の弁護士像 
舞文曲筆を事とする油断のできない弁護士とは正反対なのが、正直であり事実を曲げない弁護士です。このような弁護士は、訴訟の場で対立しても、安心感をもって臨めます。そのような弁護士とは和解率も高く、事件の解決が速いという特徴を持ちます。
相手方弁護士の言に信を置くことができるからです。

4 大切なことは「信」と「義」
相手方弁護士に「信」を置いて訴訟をするということは、実に楽しく充実したものですが、その「信」の基は、相手方弁護士が「義」を守っていることです。「義」と「信」は一つのコインの表裏の関係ですので、弁護士に大切な資質は、結局のところ「義」に尽きるものと思われます。

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