コラム

 公開日: 2016-07-13  最終更新日: 2016-07-14

賢い事業承継の手順 4 暦年贈与の活用

1 暦年贈与の意味
 暦年贈与とは,贈与税の課税期間である,毎年1月1日から12月31日までの間に受贈者が受ける贈与のことです。
これには贈与税が課されますが,贈与税の基礎控除額は110万円で,それを超える贈与額には超過累進税率が適用になりますので,贈与額が少ないほど贈与税の実効税率(実質的な税率)は低くなります。

(1)一度に贈与した場合との比較
ですから,暦年贈与を繰り返しますと,一度に贈与する場合に比べ有利です。
例えば,直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)へ500万円を贈与しますと,贈与税は48万5000円(未成年者の場合は53万円)ですので,これを10年間繰り返しますと,合計5000万円の贈与に対し贈与税は485万円(未成年者の場合は530万円)ですみます。この場合の贈与税の実質的な率は9.7%(又は10.6%)です。
しかし,一度に5000万円を贈与しますと,贈与税は2049万5000円(実効税率40.99%)未成年者の場合は2289万5000円(実効税率45.79%))もかかります。
暦年贈与を繰り返す方が,一度に贈与する場合に比べ,贈与税が少なくなるのです。

(2)暦年贈与をしない場合との比較
前述のように,暦年贈与を10年間繰り返し,合計5000万円の贈与を受けると,贈与税が合計で485万円(又は530万円)課されますが,これをしない場合は,5000万円は,相続税の課税遺産として残ります。これにかかる相続税は,遺産総額,相続税の数等により異なりますが,その部分に適用される相続税の税率は限界税率(段階税率のうち当該納税者にとっての最高税率)になりますので,例えば,それが40%だとしますと2000万円,30%だとしますと1500万円になります。
 このように,暦年贈与をしない場合は,その分相続開始時の課税遺産額が減らないため,税の負担は大きくなるのです。

2 配当還元式評価方法でする暦年贈与の活用
 子や孫への贈与や遺贈をする場合の自社株の評価は,原則的評価になり,高い価額になりますが,孫の配偶者や甥,姪など2親等以内の親族でない親族(孫の配偶者も甥,姪も3親等の親族)への贈与は,特例的評価方法(配当還元式評価方法)になりますので,贈与税や相続税が相対的に低くなります。
 そこで,後継者には自社を支配できるだけの株式(総議決権の2/3あれば十分)を贈与又は相続させるが,その余の自社株は孫の配偶者など配当還元方法で自社株の評価ができる者に贈与又は遺贈することも可能です。
 場合によっては,親族ではない会社役員や従業員へ,あるいは従業員持ち株会へ贈与又は遺贈することも可能です。

3 まずは暦年贈与を繰り返すことが基本
 自社株の生前贈与は,税負担を最小のものにできます(評価額110万円以下の贈与の場合は税負担ゼロ)ので,どの程度の贈与をするかは別として,暦年贈与を繰り返すことが,事業の承継の基本の方法です。

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