コラム

 公開日: 2016-05-16 

もっと分かりやすい解説を! 第4 葬儀費用など

家事審判官
「葬儀費用の負担についても,議論があるようですね。」

「そうです。父(被相続人)の葬儀は私が喪主となって執り行いました。その費用は香典を充てた以外は全額私が負担しています。また,初七日,四十九日の法事もしましたが,その費用は全額私が負担しています。これらの費用は,子3人が平等に負担するべきなのに,乙も丙も,葬儀費用は喪主である私が負担すべきだと言って,自分たちは,その負担をしようとしないのです。私たち兄弟3人は,法定相続分が平等と定められています。だったら,子の義務でもある葬儀や法事にかかった費用も,平等に負担すべきではないのですか?
家事審判官
「冷たい言い方になるかもしれませんが,葬儀費用や法事の費用は,遺産ではありません。ですから,遺産分割の審判で取り上げられることはありません。遺産分割の調停では,相続人全員の合意が得られた場合は,その合意内容を,調停調書に書くことはできますが,そうでないばあいは,別途相続人間で話し合うか,地方裁判所又は簡易裁判所で争っていただくほかありません。
【参照】
葬儀費用の負担者についての諸説というのは,
①慣習によって決めるべし、②喪主(葬式の主宰者)が負担するべし、③相続人が相続分の割合で負担するべし、④相続財産に関する費用と考え相続財産が負担するべし(実質的には③と同じ)等ですが,
裁判例としては,
ア 相続人説として,津地判平14.7.26は、
①相続人には条理上葬儀費用等を相続分の割合で分担すべき義務がある。
②その費用は、被相続人を弔うのに直接必要な儀式費用のみである。
③具体的には、死亡届文書代・葬儀社に対し支払った金額のうち会葬礼状代、ドライアイス、受付セット、コンパニオン費用、会館使用料、貸し布団使用料、サービス料、早期利用費、会員費、奉仕者へ支払った奉仕料、自治体への葬祭用具使用料、お寺への読経,車代である。
④その他の費用すなわち通夜,告別式等の会葬者等の飲食代金や返礼の費用,籠盛,生花,放鳥,戒名代,法要代,お寺への納骨冥骨金等は相続人が負担すべきものではない。
⑤なお、香典は、喪主が負担することとなる④の費用に先に当てられるべきであり、先に相続人らが負担すべき②の葬儀費用に当てられるべきものではない。
旨判示しています。

イ 喪主説(一部は祭祀の主宰者説)
名古高判平24.3.29は、
①葬儀費用とは,死者の追悼儀式に要する費用及び埋葬等の行為に要する費用(死体の検案に要する費用,死亡届に要する費用,死体の運搬に要する費用及び火葬に要する費用等)と解される。
②追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担し,埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当である。
③なぜならば,追悼儀式を行うか否か,同儀式を行うにしても,同儀式の規模をどの程度にし,どれだけの費用をかけるかについては,もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し,実施するものであるから,同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当であり,他方,遺骸又は遺骨の所有権は,民法897条に従って慣習上,死者の祭祀を主宰すべき者に帰属するものと解されるので,その管理,処分に要する費用も祭祀を主宰すべき者が負担すべきものと解するのが相当であるからである。
と判示しています。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
割増賃金の定額化に関する判例後の通達

すでに本コラムで紹介しました割増賃金の定額化に関する、最高裁判所平成29年7月7日判決を踏まえた通達が、同月31...

[ 労働 ]

大切にしたいもの 一能

吉川英治が描く、「私本太平記」の中に、楠正成が、一人の仮面師(めんし=鑿(のみ)を使って人の顔をつくる者) ...

[ 大切にしたいもの ]

特別の利害関係のある取締役が、取締役会決議に関わった場合の取締役会決議の効果

問題会社法369条は「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定め...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

就業規則の一括届出制度について

1 就業規則の届出義務は、事業場ごとに。労働基準法89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に...

[ 労働 ]

我がコラムへのご訪問、ありがとうございます

昨日の私のコラムへの訪問者数は3400名、閲覧コラム総数は6586通でした。訪問者数では、過去最高を越え...

[ その他 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ