コラム

 公開日: 2016-04-26  最終更新日: 2016-04-27

もっと分かりやすい解説を! 第1 使途不明金問題

家事審判官
「私は,家事審判官のAといいます。この件は,使途不明金の存否を巡る争いのために調停成立の見込みがない,という理由で,私の方に回ってきました。そこで,私が暫くの間,単独で調停を進めさせていただきます。調停の成立が困難だと思ったときは,審判手続に移し,審判で遺産分割をする予定です。よろしくお願いいたします。
最初に,確認しておきますが,この件は,

被相続人  母
遺言書   ない
相続人    甲  乙  丙
法定相続分 1/3  1/3 1/3 

で間違いありませんか?
甲・乙・丙 
「はい。間違いありません。」
家事審判官
「使途不明金が問題になっているようですが,どなたが問題にされているのですか?」

「私です。母が亡くなるより5年前に,母名義の預金口座から,甲が母に無断で,600万円をも引き出していますので,甲はこの金額を遺産の中に返金するべきです。」

「冗談じゃない。私はそんなことはしていない。」

「甲以外に,母の預金口座からお金を引き出すことができた者はいないはずだ。」

家事審判官
「そのような意味の使途不明金ならば,遺産分割の対象にはなりませんので,そのための話合いは無意味ですよ。」

「何故ですか?母の遺産になるべき預金が,甲に勝手に使い込まれているのですから,その問題も解決してもらわないと,遺産分割はできません。」
家事審判官
「遺産分割は,『被相続人が亡くなった時(相続開始の時)にあった財産』が対象になるものですから,“それより前にはあったが相続開始時には存在していない財産”は遺産分割の対象にはなりません。


「そうであれば,甲が母の生前,母に無断で引き出して使い込んだ600万円については,母は甲に対しその返還を求める権利があるはずだから,甲に対する600万円の返還請求権は相続開始時の財産になるのでは・・・。」
家事審判官
「仮に,甲に対する600万円の金銭請求権(債権)が相続開始時の財産になるとしても,債権は各相続人が相続分で分割して承継しているというのが判例の見解ですので,遺産分割の対象にはなりません。」

「では,家事審判官は,私(乙)や丙に,泣き寝入りせよということですか?」
家事審判官
「いいえ。あなたの言われる権利があるとすれば,あなたは,その三分の一である200万円の債権を,相続で取得していますので,その権利は行使できますよ。しかし,その債権の存否について争いがある場合に,解決できる方法と管轄裁判所は,訴訟であり地方裁判所です。家庭裁判所ではありません。」

「家事審判官の言われることは納得できる。私(丙)は,甲に使途不明金に関して責任があるとは思っていない。乙が使途不明金につき甲に対し責任を追及したいというのなら,勝手にやってくれればよい。しかし,それを遺産分割調停の中でするのは反対だ。私には全く利害関係の無い,使途不明金という問題で,甲と乙が口角泡を飛ばして議論をするため,肝心の遺産分割ができないでいる。もうこれ以上,時間を空費しないようにしてほしい。」

「・・・・」
家事審判官
「乙さんにも,ご理解いただいたと思います。今後,使途不明金問題は一切しないように,お願いいたします。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法(2)特別受益の持戻し計算型
イメージ

【補説】生前贈与を受けている相続人は、その生前贈与分を、相続の先渡しを受けたものとして、具体的相続分...

[ イラストによる相続法 ]

独禁法って何だ?1 独禁法・公取委・課徴金

1 独禁法「のう、後藤よ!独禁法って何だ?」「独禁法は略称でなあ、正しくは“私的独占の禁止及び公正取引の...

[ 菊池と後藤の法律実務レポート(企業編) ]

第2章 1遺産分割 2具体的相続分(金額)を決める三つの方法
イメージ

【補説】単純型というのは、生前贈与も遺贈も寄与分もない場合のことです。単純型は、遺産の額に、法定相...

哲学とは何?

 ここまでに、徳川家康の残した処世訓のこと、法の箴言のこと、を書いてきたが、処世訓も箴言も、実に意味深い言...

[ 格言や歴史上の偉人の言葉に学ぶ ]

第2章 1遺産分割 1遺産分割とは(3)遺産分割内容を決める二つのステップ
イメージ

【補説】相続人間で、順を追って、具体的相続分を算出し、その具体的相続分に見合う遺産をどのように分割取...

[ イラストによる相続法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ