コラム

 公開日: 2016-04-21 

遺産の評価問題

1 遺産と生前贈与財産の評価は必須
遺産分割は,各相続人の具体的相続分(遺産評価額から取得できる金額)を算出するところから始まりますが,その具体的相続分を算出するには,遺産のみならず,生前贈与財産も,評価する必要があります。

2 財産の評価方法
遺産分割が,協議や調停でまとまらない場合は,最終的には,家庭裁判所が審判で決めますが,その際の時価評価額は,全相続人が合意すればそれにより,合意ができない場合は,鑑定によって決められます。
“合意,さもなくば,鑑定”です。

2 評価の基準時
財産の評価の基準時は,相続開始時と遺産分割時です。
具体的相続分算出のためにする財産(遺産及び生前贈与財産)の評価基準日は,相続開始時です。しかし,相続開始時の評価額は,遺産分割時までに増減変動している場合があり,そのような場合は,遺産分割時の時価評価も必要になります。
ただ,そのような場合でも,二つの時点で,全財産を,評価するのは,煩瑣であり,費用もかかりますので,審判実務では,全相続人が同意して,遺産分割時を基準時とした評価にしているのが実状です。

3 評価額又は評価方法の合意が容易にできない現状
不動産や自社株については,相続人間で評価額が割れることがあります。
その場合,鑑定で評価額を出してもらわないと,審判は無論,調停も,協議も,前に進みません。
そうかといって,“では鑑定で評価額を出してもらおう”という話には,簡単には,なりません。
理由は二つあります。一つは,相続人の思惑と違った金額が出てくるおそれがあることです。
相続人の中には,「この土地を自分が貰うなら評価額は1坪10万円でよいが,相手方がこの土地を取得するというのなら,時価は坪20万円でないと承知しない。」という者もいるほど,本来客観的であるべき時価評価に主観的事情を持ち込む相続人もいて,自分の思惑と違った鑑定が出るのをおそれる相続人がいるのです。こういう相続人は,容易に,鑑定を,という態度にはならないのです。
もう一つの理由は,専門家に鑑定を依頼すると,費用がかかることです。

4 合意,さもなくば,鑑定
私は,長年,家庭裁判所の調停委員をしましたが,遺産分割の調停は,財産の評価額を問題にすることなく,まとまる場合もありますが,そうでない場合は,財産の評価は避けて通ることはできません。その場合,相続人間で財産の評価額につき合意ができない限り,鑑定は必要なのです。
 評価額について合意ができないと思ったときは,できるだけ早く,相続人自身が,手続外で私的に,専門家(不動産なら不動産鑑定士,自社株から公認会計士)に鑑定を依頼するか,裁判所を通じて鑑定の嘱託をしてもらうか,いずれかを決断するのが,遺産分割を円滑かつ迅速に進める要諦です。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
大切にしたいもの 徳義

正直であること、嘘をつかないこと、ごまかさないことは、人が人として生き抜くうえで、最も重要な徳目であると思...

[ 大切にしたいもの ]

大切にしたいもの 友

 刎頸(ふんけい)の友という言葉があります。その友のためなら、たとえ首を切られても、悔いないくらいの友、と...

[ 大切にしたいもの ]

不動産の売買に伴い、LPガス供給に関する契約を、買主に承継させるための契約条項

これは、LPガス供給に関する契約上の地位を、不動産の買主に譲渡する契約になります。不動産の売買契約を媒介...

[ 契約書 ]

遺言執行者は相続人の代理人ではない! いずれ民法1015条は削除されることになる

 民法1015条の「遺言執行者は相続人の代理人とみなす。」という規定を根拠に、遺言執行者は、相続人の代理人であ...

[ 相続判例法理 ]

誤振込による預金は口座名義人のもの

 A社がB社に振り込む予定であった金銭を、間違えてC社の口座に振り込んでしまった後、D社が、それを差し押さ...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ