コラム

 公開日: 2016-03-22 

コンピュータープログラムの作成業務委託契約は,請負契約か,委任契約か?

1 請負契約と委任契約の違い
請負契約ならば,①仕事が完成しないと,報酬が請求できず,①完成しても瑕疵があるときは瑕疵担保責任を負うのに対し,
委任契約ならば,③完成しなくとも,仕事をした分の報酬が請求できる上に,④瑕疵担保責任を負うことはありません。

2 コンピュータープログラムの作成委託契約は,請負契約
コンピュータープログラムは完成しない限り,使い物にならないし,瑕疵があれば,契約解除や修補請求ができるものですから,請負契約です。

3 「委託」契約という文言が招いた誤解
 ここに,注文者甲がいて,コンピュータープログラム作成業者乙がいて,甲と乙間に,「コンピュータープログラムの作成委託契約」を結んだ事例があります。契約書は,無いに等しい,簡単なものでした。そのため,その契約を,「請負」契約であると考えた甲と,「委任」契約と考えた乙の間の,考えの相違から,トラブルが続出しました。 
 最初のトラブルは,乙が,契約目的であるコンピュータープログラムの作成を完了したとして,それを,甲のコンピューター内に使用できるようにする作業を始めるにあたり,「コンバート作業代金」という名目での費用の請求をしたときに起きました。
 甲としては,納入のあったコンピュータープログラムのテストもしていない段階,したがって,乙がなすべき請負仕事の完成も確認できない段階で,しかも,約束もしていなければ契約書にも記載されてもいない「コンバート作業代金」に納得できないことはいうまでもありません。
 乙の言い分は,契約は,コンピュータープログラムの作成の「委任」であり,「コンバート作業」は別の「委任」になる,というものだったのです。乙のいう「委任契約」の根拠は,契約書の題名が「コンピュータープログラムの作成委託契約」と書かれていたことにあったようでした。
 
4 教訓
 たしかに,一般に,契約書に,「業務委託契約」と書かれた契約の場合は,「委託」が「委任」に通じやすいところから,「委任契約」と誤解されるかもしれません。
しかしながら,コンピュータープログラムの作成は,前述のように請負契約ですから,契約書に明確に約束されていない限り,完成前には,種々の名目を立てた報酬や手数料が請求できるものではありません。
この件の甲は,乙に前述のような誤解を与えないためには,契約書の題名を,「コンピュータープログラムの作成請負契約」とした上で,
契約書の中味としても,
①「仕事を完成しないと報酬を支払わない」ということ,
➁ 報酬は,コンピュータープログラムの完成の対価であり,仕事の完成は,乙のいう「コンバート作業」やエラーやパグが出たときの補正等をクリヤして,完成検査に合格したときであること,及び,
③ 仕事の完成後であっても,一定期間(瑕疵担保期間)内に,瑕疵が発見された場合は,乙が無償で修補すること
を明確に定めておいておけば,今回のようなトラブルは避け得たと思われます。
むろん,それを定めていない現在の契約書でも,甲の言い分が通らないというのではありませんが,契約書に以上のことを明記しておけば,乙から,契約書に書かれていない費用の請求を受けることはなかったと思われます。

(続く)

ご相談は弁護士法人菊池綜合法律事務所へ!

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
内部統制システムとは何?① 法理が先で、条文は後

1 大和銀行事件判決の中で生まれた概念1995年大和銀行のニューヨーク支店の行員某が、アメリカ国債の簿外取引...

[ 会社関係法 ]

定期建物賃貸借契約締結上の注意メモ

会社と会社との間の契約でアドバイスした内容例1 契約締結前にすること → 当該契約が定期建物賃貸借契約であ...

[ 契約書 ]

テレビ報道等が名誉毀損になる場合③ 事実摘示か法的評価か?

最高裁判所第二小法廷平成24年3月23日判決は、次のような事案で「法的評価」か「事実の摘示」かで、争われた事件で...

[ 民法雑学 ]

本日の新聞報道より

1 会社法改正試案まとまる本日の新聞には、社外取締役の義務化、株主提案権の回数の制限などが議論され...

[ 会社関係法 ]

テレビ報道等が名誉毀損になる場合② 名誉毀損にならない要件

1 名誉毀損の成立要件これは、「公然事実を摘示し、人の名誉を毀損すること」(刑法230条)です。「公然」と...

[ 民法雑学 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ