コラム

 公開日: 2010-12-30 

相続 84 遺言による遺産分割の禁止(遺言事項4)


1 遺言で、最大5年間は、遺産分割を禁止することができる
民法908条後段は「被相続人は、遺言で、・・・相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」と規定していますので、被相続人は、遺言で、遺産分割の禁止を定めることができます。
遺産分割の禁止は、この他、家庭裁判所が、審判で、遺産分割を禁止する場合もあります(コラム「相続83」参照)が、この場合は、「特別の事由」が必要です。
被相続人が遺言で遺産分割を禁止する場合は、特に理由は要りません。

2 遺産分割を禁止するケース
 遺産分割の協議は、相続人間で利害の対立が生じやすく、結構労の多い仕事になりますが、相続人の中に、①学業に専念する必要のある者、②親権者又は特別代理人に遺産分割協議の意思決定をさせるのが相応しくない未成年者、③遠隔地に住んでいるため、遺産分割協議に参加できない者、④余命長くない者等がいる場合、一定期間、遺産分割を禁止する必要がある場合もあるでしょう。
①のケースでは、相続人は学業に専念できる。
②のケースでは、未成年者が成年に達した後で、自らの意思で遺産分割の協議に参加できる。
③のケースでは、遠隔地での生活や仕事に専念できる。
④のケースでは、死ぬまで遺産分割協議に煩わされないだけでなく、遺産分割の結果のリスク(住居が他の相続人の財産になり、そこから退去を求められる等)を回避できる。

3 遺産分割を禁止する範囲
全相続財産を遺産分割の禁止の対象にすることは無論可能ですが、特定の相続財産についてのみ遺産分割を禁止するのも可能です。
相続人の1人が被相続人が自宅にしていた土地建物に住んでいるので、その状態を一定期間継続させてやりたいと思えば、被相続人が、遺言で、自宅のみを遺産分割禁止にすることが考えられます。

4 文案例
「私は、①長男と次女が大学を卒業するまで遺産分割を禁止する。②預貯金は、全額妻に相続させるが、妻は、この中から、長男と次女がそれぞれ大学を卒業するまで、その学費と生活費を支弁すること。」

5 他の遺言事項と合わせて効果がある
遺産分割禁止の遺言は、相続人の利害や便宜を考慮してなされるのが普通ですので、そのような遺言を書く被相続人は、他の事項についても配慮の行き届いた遺言を書いているのが普通です。4の文案例はそのために書いたものですが、文案例の①は遺産分割禁止の遺言、②は相続分の指定の遺言です。
このよううに、遺産分割禁止の遺言を書く被相続人は、それだけでは被相続人の意思が相続人に伝わらず、また、遺言したいことが完結しません。
そこで、遺産分割禁止の外に、相続分の指定等の遺言をも書く必要があるのです。

6 期間は最大5年間
遺産分割の禁止期間は、5年を越えてはなりません。
5年を越える期間を遺産分割禁止期間としても、5年経過しますと、相続人は誰でも遺産分割の請求が出来ます。
家庭裁判所も、初めの5年間は、遺産分割の審判を拒否しますが、その後は遺産分割の審判をすることになります。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
離婚原因の一つである「夫婦関係の破綻」が,別居期間が短くとも認められる場合

これは,私の事務所が勝ち得た離婚判決の例です。一審判決は,別居期間が2年程度(一審判決までの期間)では,...

[ 離婚 ]

課税価格と相続税評価額とは違う

1 遺産の評価問題遺産分割の調停の席で,遺産(相続財産)の評価をどうするかという問題が提起されることがあ...

[ 相続相談 ]

遺留分減殺請求事件と相続税の処理

1 遺留分減殺請求をして,相続財産の一部の返還又は価額弁償金の支払を受けた遺留分権利者甲の場合これによっ...

[ 相続相談 ]

情報公開条例の誤解⑤ コピー代は全額請求するべし

Q 当市の公開条例には,公文書の開示の方法として写し(コピー)を交付する方法を採っており,コピー代として1...

[ 地方行政 ]

情報公開条例の誤解④ 権利がないことと,権利の乱用は違うこと

Q 住民からの公文書の開示請求に応じた後の,公文書の内容に対する質問に対しては,回答する義務のないことは分...

[ 地方行政 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ