コラム

 公開日: 2016-02-01 

貸金庫内の動産の差押方法

Q 債務者が銀行内にある貸金庫の中に,現金,貴金属を有してると思われる場合,債権者は,債務名義(金銭支払いを命ずる確定判決書など)に基づき差押えができるか?

A できます。
最高裁判所第二小法廷平成11年11月29日判決は,
⑴ 銀行と利用者との間の貸金庫取引は、銀行の付随業務である保護預り(銀行法10条2項10号)の一形態であって、銀行が、貸金庫室内に備え付けられた貸金庫ないし貸金庫内の空間を利用者に貸与し、有価証券、貴金属等の物品を格納するために利用させるものである。
⑵ 利用者としては、銀行の協力なくして貸金庫に格納された内容物を取り出すことができない。・・・銀行は、貸金庫の内容物に事実上の支配を及ぼしており、その「所持」(民法180条)を有することが明らかである。・・・したがって、銀行は、貸金庫の内容物について、利用者と共同して民法上の占有を有するものというべきである。
⑶ ・・・貸金庫の内容物に対する銀行の前記占有は、貸金庫に格納された有価証券、貴金属等の各物品について個別的に成立するものではなく、貸金庫の内容物全体につき一個の包括的な占有として成立するものと解するのが相当である。
⑷ 利用者は、貸金庫契約に基づいて、銀行に対し、貸金庫室への立入り及び貸金庫の開扉に協力すべきことを請求することができ、銀行がこれに応じて利用者が貸金庫を開扉できる状態にすることにより、銀行は内容物に対する事実上の支配を失い,それが全面的に利用者に移転する。
⑸ ・・・銀行に対し、貸金庫契約の定めるところにより、利用者が内容物を取り出すことのできる状態にするよう請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利にほかならない。また、・・・この引渡請求権は、貸金庫の内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利という性質を有するものというべきである。
⑹ 以上によれば、貸金庫の内容物については、法143条に基づいて利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法により、強制執行をすることができるものと解される。 
⑺ ところで、貸金庫の内容物引渡請求権が差し押さえられると、法163条により、債権者の申立てを受けた執行官において、貸金庫の内容物の引渡しを受け、これを売却し、その売得金を執行裁判所に提出することになる。もっとも、貸金庫の内容物についての貸金庫契約上の引渡請求権は、前記のとおり、貸金庫の内容物全体を対象とする一括引渡請求権であるため、これが差し押さえられると、差押禁止物や換価価値のない物を含めて貸金庫内に在る動産全体の引渡請求権に差押えの効力が及ぶ。この場合には、執行官をして、貸金庫の内容物全体の一括引渡しを受けさせた上、売却可能性を有する動産の選別をさせるのが相当であり、このように解することは、引渡請求権の対象である動産の受領及び売却について執行官を執行補助機関として関与させた法163条の趣旨にもかなうものである。
⑻ なお、債権者において特定の種類の動産に限定して引渡請求権の差押命令を申し立てた場合、その趣旨は、執行裁判所に対して売得金の配当を求める動産の範囲を限定するものと解するのが相当である。そして、差押命令においてこのような限定が付された場合には、執行官が売却可能な動産を選別するに当たってこの制限に服すべきものであるが、このことにより、既に説示した貸金庫の内容物全体についての一括引渡請求権という性質が変わるものではない。
⑼ そうすると、貸金庫契約に基づく引渡請求権の差押えにおいては、貸金庫を特定することによって引渡請求権を特定することができる。さらに、差押命令に基づく動産の引渡しが任意にされない場合の取立訴訟においても、差押債権者は、貸金庫を特定し、それについて貸金庫契約が締結されていることを立証すれば足り、貸金庫内の個々の動産を特定してその存在を立証する必要はないものというべきである。
⑽ ・・・・(よって,)原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。銀行(被上告人)は、貸金庫名義人の債権者(上告人)の申立てを受けた大阪地方裁判所執行官に対し、別紙記載一の貸金庫内に存在する動産を別紙記載二の方法により引き渡せ。
という判決を下しました。

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