コラム

 公開日: 2016-01-20  最終更新日: 2016-01-22

「風と共に去りぬ」と「風とともに去りぬ」では,訴求力が違う

  これは,映画にもなったマーガレット・ミッチェル原作の「Gone With the Wind」の邦訳として,いずれが正しい語句の書き方になるか,という問題です。
 原作者がこの題名の「With」の「W」を大文字にしていることからも明らかなように,邦訳は,「風と共に去りぬ」でなければなりません。
 この小説の結末は,主人公スカーレット・オハラが,自分が真に愛しているのはレッド・バトラーであることに気がつき,レッド・バトラーの元へ帰ろうとしたのですが,レッド・バトラーは,スカーレットの言葉を信じることができず,去って行きます。
 その時,スカーレットは,「そうだ。故郷のターラへ帰ろう。明日は明日の風が吹くわ。」(原語では "Tomorrow is another day."ですが,題名とマッチした優れた訳になています。)とつぶやくのですが,このスカーレットの思いを表現したのが,風と「共に」なのです。
 ここでの「風」は,スカーレットの,どんな過酷な運命にも打ち勝ってきた強靱な生命力から生まれる希望を象徴するものですが,スカーレットは,この風と「共に」に去ったのです。
 ですから,この「風」は彼女の属性そのものであり,それとは無関係なものではないのです。
  スカーレットはこの風と「共に」去っていったから,多くの読者は,やがてスカーレットは持ち前の明るさに,一段と逞しくなった智恵を働かせて,天賦(ぷ)の美貌やチャーミングな笑顔を武器に,どのようにしてレッド・バトラーの心を取り戻すだろうかという期待や希望を抱き得るのではないかと思います。

 もし,題名のうちの「With」が「with」であり,邦訳が「共に」ではなく「ともに」であるとすれば,その「風」はスカーレットの属性ではないことになり,たんなる時代の風,すなわち南北戦争直後の混沌とした世相を意味するものになってしまいます。
 そうなれば,スカーレットは,レッド・バトラーまでをも失い,孤影悄然たる姿で去っていったという寂寥(りょう)感しか,読者に与えないのではないかと思えます。

 漢字で「共に」と書く場合は,「共に」に特別な意味を込めているということが明らかに分かります。漢字の持つ訴求力というべきものです。一方,平仮名で書くと,その訴求力はありません。

 文や文章では,“漢字固有の意味を,読者に訴求したいときは漢字で書き,訴求を欲しないときは平仮名で書くことが重要です。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
景品表示法違反② 課徴金制度の導入と初適用事例

優良誤認表示などの不当表示に、課徴金制度が導入されたのは、改正景品表示法の施行日(平成28年4月1日)から...

[ 会社関係法 ]

民法(債権法)改正法が成立

 本日、民法(債権法)に関する改正民法が成立しました。制定以来、約120年ぶりの大改正です。改正は、約200項...

[ 債権法改正と契約実務 ]

景品表示法違反① 合理的根拠資料を持たずして、効果・性能表示をなすなかれ

 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、「不当表示」を禁じています。その一類型である「優良誤認表...

[ 会社関係法 ]

従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効

東京地方裁判所平成28年12月19日判決は、会社が従業員との間で競業避止契約を結び、従業員から退職の申し出...

[ 会社関係法 ]

店舗外観を不正競争保護の対象にした初裁判

東京地方裁判所平成28年12月19日決定(仮処分決定)は、甲社が直接又はフランチャイズ契約により加盟店に営...

[ 会社関係法 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ