コラム

 公開日: 2015-12-21  最終更新日: 2015-12-22

労働 親会社には団体交渉応諾義務があるか?

 当然には,あるといえません。というより,親会社が使用者とみられる場合はありますが,非常に限定的なケースになります。
すなわち,労働組合法6条は「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」と規定しているとおり,使用者には当然団体交渉応諾義務がありますが,その親会社には,この規定の適用は受けません。
 ただ,東京地方裁判所平成平成23年5月12日判決は,「一般に「使用者」とは労働契約上の雇用主をいうものであるが,労組法7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除,是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると,雇用主以外の事業主であっても,当該労働者の労働者の基本的な労働条件等について,雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配,決定することができる地位にある場合には,その限りにおいて,当該事業主は同条の「使用者」に当たると解するのが相当である。」と判示しています。
控訴審でもこの考えが支持されています。

 とはいうものの,当該係争事件では,親会社が資本関係および出身役員を通じて子会社の経営に一定の支配力を有し、その経営上の意思決定が子会社の労働者の賃金等に影響を与え得てはいたのですが,それだけでは親会社は使用者とはみられていません。同事件の子会社である使用者は,労働者の賃金は当該子会社との団体交渉を経て決定しており,親会社がその過程に関与しているものでもなかったため,使用者とはみられていないのです。

なお,最高裁判所平成7年2月28日 朝日放送事件判決は,「雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。」と判示していますので,子会社から従業員の出向を受けた親会社の場合は,労働者の基本的な労働条件等の決め方いかんによっては使用者とみられる可能性があるといえるでしょう。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

立法論としての相続法⑫ 遺言執行者の権限の明確化(具体論)

法制審議会民法(相続関係)部会第9回会議(平成28年1月19日)の提出された資料では、遺言執行者の権限を明...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ