コラム

2010-12-22

相続 76 負債の相続


1 負債は法定相続分の割合で相続され、遺産分割の対象にはならない
大阪高裁昭和31.10.9決定は、「被相続人の負債即ち相続債務は、それが可分のものであれば、相続開始と同時に、当然共同相続人に、その相続分に応じて分割承継せられるのであり、また不可分のものであつても、これを特定の相続人の負担とするのは、債務の引受として債権者の承諾なき以上効力を生じない関係にあるのであるから、遺産分割の対象たる相続財産中には、相続債務は含まれないものというべきである。」と判示しており、多くの審判例は、負債は法定相続分の割合で相続人間に分割して承継され、遺産分割の対象にはならないとしています。

2 遺産分割の際、すでに支払われている相続債務については、例外的に遺産分割の対象になるとされたケース
大阪高裁昭和46.9.2決定は、「一般的に言つて被相続人の債務が分割の対象とならないことは是認すべきであるが、・・・相続人の一部の者が遺産分割前に被相続人の債務を弁済したような場合には、その債務並に弁済がいづれも正当と認められる限り、同様に遺産分割手続中で清算するのが相当である。」と判示しました。
また大阪家裁昭和47.8.14審判は、「相続人の1人が遺産分割前に相続債務を弁済した場合には、その債務は元来共同相続人が相続分に応じて負担すべきものであり、弁済した相続人は他の共同相続人に対し求償権を有すること明らかであるから、該債務に関する清算は、共同相続人間の債権債務関係であるにせよ、第三者に影響を及ぼすこともないのであるから、民法第906条の趣旨にてらし、便宜、遺産分割審判の対象として差し支えない」と判示しています。もっとも、同審判は、「該債務が特定できないなど特段の事情がある場合には、これを分割の対象から除外し、通常の相続債務に関する共同相続人間の清算の問題として別途の解決に委ねるのが相当である。」とも判示しています。

3 便宜的に遺産分割の対象にする場合もあるが、債権者を拘束しない
遺産分割の際、収益のある賃貸用マンションを取得する相続人が、そのマンションの借入金債務を引き継ぐことを約束する場合があり、その限りで、相続債務に関する遺産分割協議が出来ることもあるのですが、その場合に、その約束は債権者を拘束することはありません。

4 全財産の包括遺贈の場合は、包括受遺者が負債の全部を承継する
最高裁平成21.3.24判決は、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであ」ると判示していますので、包括遺贈で相続財産のすべてを取得した者は、遺言で反対の意思が表示されていない限り、相続債務も全部承継したことになります。

5 財産の一部(一定割合)について包括遺贈があった場合
前記最高裁平成21.3.24判決は、「これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。」と判示していますので、包括遺贈の割合で、債務も承継することになります。

6 対債権者の関係は?
前記最高裁平成21.2.24判決は、「もっとも,上記遺言による相続債務についての相続分の指定は,相続債務の債権者の関与なくされたものであるから,相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり,各相続人は,相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには,これに応じなければならず,指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが,相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し,各相続人に対し,指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。」と判示していますので、債権者の立場からは、全相続人に対し、法定相続分で請求するか、指定相続分で請求するかを選択することができることになります。

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