コラム

 公開日: 2015-11-27 

(補説) 境界確定協議書は何故必要とされるのか?また,境界標について

5 境界確定協議書
⑴ 境界(筆境)を定める効果はない
 境界は,国の秩序に関するものですから,隣地の所有者間の合意で,境界を定めたり変更することはできません(最高裁判所昭和31.12。28判決)。
 したがって,隣地の所有者との間に「境界合意書」や「境界確定協議書」を取り交わして、境界を決めたとしても、それが法的な意味での境界と一致しないときは、この「境界合意書」は,境界(筆境)を定めるものとしての効果はありません。
⑵ 真の境界と認定されやすい
 しかしながら,「境界合意書」や「境界確定協議書」で定めた“合意による境界”がある場合は,境界確定訴訟が起こされたときで真の境界が判定できないときは,その合意による境界を境界として確定されることが多くなると思われます。
境界確定訴訟は,境界の確認をする裁判ではなく,裁判所において真の境界が分からない場合でも,裁判所が最良と思う位置を境界と定めなければならない裁判ですので,隣地所有間との合意で定めた境界があるのなら,その境界を真の境界として確定させようという心理が裁判所に働くからです。
⑶ 境界(所有権境)と認定される場合もある。
 大阪高裁昭和38.11.29判決は,合意で決めた境界は,特段の意思表示がない限り、筆境ではないとしても所有権境を定めたもの,したがって,合意による境界線と真の境界線との間の土地は,一方から他方へ譲渡される暗黙の合意がなされているものと解されると判示していますので,境界確定協議書は,隣地との所有権境を定めたものと認められる場合もあります。
⑷ 簡易で境界紛争を未然に防止する最良の手段
 「境界確定協議書」を取り交わすことは,現在のところ,簡易で境界紛争を未然に防止する方法としては,最良の方法といってよいでしょう。
⑸ 土地売買契約では,これの提供を求められる場合がある
 したがって,土地の売買契約を結ぶ場合は,買主は売主に対し,隣地所有者との間に「境界確定協議書」を作成し提供することを求めることが多いのです。
⑹ トラブル多い
 売買契約書では,通常,売主に,隣地所有者との間に「境界確定協議書」を作成し買主に提供する義務を課しているものは少ないように思いますが,そうすることが当然であると考える買主もいますので,売買契約書では,売主の境界明示義務の内容を具体的に書いておかないと,トラブルになるのです。

6 境界標について
境界標とは、不動産登記法施行細則に書かれた言葉ですが、意味は、それだけでは目に見えない境界につけられた目印のことです。境界標識という言い方もされます。
 大きな山林の境界などでは、自然の尾根、沢、石塚などの地形、地物が境界標あるいは境界標識とされる場合もありますが、宅地などは、家の敷石、杭などの人工的に設置された境界標識が用いられます。
   なお,地積の変更や分筆登記をする際に作られる地積測量図に記載される境界標は、不動産登記事務取扱手続準則で、永続性のある石杭または金属標等の標識であることが要求されております。
 一般的には、コンクリート杭、鉄鋲など①不動性(容易に動かない物),②顕著性・明瞭性(境界標識であることが一見して分かる物),及び③耐久性(長い年月風雨に絶え得る物)のあるものが求められているのです。
 境界標があるから当然それが境界に設置されたものであると認められるわけではありません。
 しかし境界標の位置が、境界であると事実上推定される効果はあります。
 不動産登記法施行細則は、地積の変更、分筆登記をする場合は、地積測量図を作ることを求めていますが、その際、境界標があるときは、地積測量図に記載しなければならないことになっていますので,それだけ境界標が事実上,境界確認には重要な意味を持っているということになります。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ