コラム

 公開日: 2015-11-25  最終更新日: 2015-11-26

30 意外や意外,決済の障害になる,土地の境界明示条項

1 寸地尺土の争い
 土地の境界争いは,結構,複雑で,裁判所には分かり難い特徴を持つものです。
 寸地尺土であっても,武力を用い,命をかけて争った時代もあったのです。
 その寸地尺土の争いを起こさないように,境界の明示に関しては,神経を使ってほしいものです。
2 境界明示条項をめぐる争い
 境界明示に関する条項には,
(1)境界を明示する義務を免除する条項
 これは破産管財人が破産財団に属する土地を売却する場合などに書かれます。
理由としては,①破産管財人は,一般に,隣地との境界を知らないこと,➁後日境界が明確ではないという理由で,売買契約が解除されるリスクをなくすることなどがあります。
 「売主は,買主に対し,本件土地の境界については明示しないこととする。」と書くのがよいでしょう。
(2)明示義務だけを定め,具体的に明示方法を定めない条項
 例えば,「売主は,買主に対し,本件土地の境界については明示する。」というような条項ですが,これが紛争になりやすいのです。
 売買契約前の時点で,隣地所有者との間に「境界確定協議書」が作成され,境界標が設置されている場合は,その書面を交付し,境界標を指さすだけで境界明示はできますが,そういうものがない場合は,境界明示義務に関しては,一般的にいって,売主は境界を指させば明示したことになると考える傾向があるのに対し,買主は,売主が隣地所有者の立会いの下で境界の確認をし,隣地所有者との連名による「境界確定協議書」を作成し,確認した境界に境界標を設置するところまで要求する傾向があるのです。
 ですから,境界明示を定める場合は,売主がどこまですれば,境界を明示したことになるのかを,具体的かつ明確に書いておく必要があるのです。
例①「売主は,買主に対し,本件土地の境界については現在ある境界標を指示することをもって,境界明示とする。」や,例➁「売主は,引渡し期日迄に,本土地に隣接する全ての宅地及び官有地との境界について,隣接地所有者との間で取り交わされた境界確認書及び道路敷地境界証明書を買主に交付するものとし,当該書面の交付を以って,買主に対し,境界を明示したものとする。」
などの条文が考えられます。

(3)紛争実例
あるマンション建築会社は,マンション建築のために買った土地の境界について,売買契約書には「売主は境界を明示する」とだけしか書いていなかったにもかかわらず,専有部分(マンションの住戸)を売るには,「境界確定協議書」の写しを,専有部分の買主に交付する必要があるという理由で,それが準備できない買主の債務不履行を理由に土地の売買契約を解除する意思表示をして,紛争が生じたことがありますが,土地の買主が売主に対し,隣地所有者との「境界確定協議書」まで要求するのであれば,そこまでの義務を売買契約書に書いておかなければなりません。注意すべきことです。

 いずれにせよ,売買契約は締結できたが,決済の時までに,境界明示の方法に関して紛争が生じ,決済ができなくなるというケースは,決して希なケースではありません。
 その場合,自己に非があれば,違約金を支払い,相手方に非があれば,違約金をもらえるという関係になるのですが,売主,買主とも,自己に非があるとは思わないのが,この境界明示問題の特徴です。
 この問題は,「境界明示に関し,売主買主間で紛争が生じた場合は,双方いずれからも,本契約を解除することができる。この場合,相手方に対し違約金や損害賠償請の請求はできないものとする。」くらいの条項を書いておきたいものです。
 

3 境界紛争があることは,瑕疵になる可能性が大きいので,契約書の中に明確に書いて置くこと
境界紛争がある場合は,これは瑕疵になる可能性が大きく,売主には,買主に対し,告知しなければなりません。
その上で,「売主と本件土地の東隣地の所有者間には境界について争いがあること,売主は買主に対し境界争いを解決する義務を負わないことを,買主は承知する。」というような条項を書いておくとよいでしょう。

4 建物の越境問題
 境界に争いがない場合でも,売買対象の建物が隣地に越境しているとか,隣家が売買対象の土地に越境して来ているとかいう問題があれば,これも売主から買主へ告知する義務があります。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

3

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
民法雑学 不当利得返還請求権の消滅時効は、権利発生の時から、進行が開始する

先日、45年前の子供の取り違えによる債務不履行を原因とした損害賠償請求権の時効は、取り違えを知った時から、消...

[ 民法雑学 ]

遺言執行者制度は機能しているか?③ 日弁連・懲戒委員会の懲戒議決に通底する考え

3 日弁連・懲戒委員会の懲戒議決に通底する考え日弁連・懲戒委員会は、(1) 民法1015条の「遺言執行者...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者制度は機能しているか?② 弁護士の総意(日弁連総会議決)は、反対意見

2 弁護士の総意(日弁連総会議決)は、反対意見 日弁連総会は,平成16年、日弁連規則を改正し,平成13年に...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者制度は機能しているか?① 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説

1 日弁連・懲戒委員会の遺言執行者観は相続人代理人説 日弁連・懲戒委員会は,平成13年,「全遺産を相続...

[ 相続判例法理 ]

遺言執行者とは何者か?④ 会社の清算を遺言執行者に託した遺言書の例

次の遺言書は,遺言書実務で書かれた遺言書の一つです。遺言書 遺言書 私,凸山太郎は,次のとおり...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ