コラム

 公開日: 2015-11-19 

27 嘘をつく者を,法は助けず(瑕疵担保免責特約は無効なり)

Q 土地の売買契約を結ぶ際,売主Aから,瑕疵担保免責特約を入れて欲しいと要請された買主Bは,売主Aに対し,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物は無いだろうな,と質問しました。これに対しAは,“そのことは問題ない”と答えました。かくて売主Aの瑕疵担保責任免責約款付きの売買契約が結ばれたのですが,買主Bは,土地を取得した後,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物があることを知りました。
 この場合,買主Bは売主Aに瑕疵担保責任を追及できるでしょうか?

A 民法572条は「売主は、・・・(瑕疵)担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実・・・については、その責任を免れることができない。」と規定しています。
 この規定によれば,瑕疵のあることを知っていた売主は,瑕疵担保責任の免除を受けませんが,この件の売主Aは,瑕疵のあることを知っていたわけではありません。したがって,民法572条の要件に該当することをしたものではありません。
 しかしながら,瑕疵があるか否かについての知識はなかったのに,質問に対し,あたかも調査をして地中埋蔵物のないことを確認したかのような“問題ない”という答えをしたのです。これでは,買主に対する裏切り行為です。
 天網恢々疎にして漏らさず,ではありませんが,嘘をつくような不誠実な売主には,何らかの責任を負わすべきです。

 東京地裁平成15.5.16判決は、コンクリートがら等の地中埋蔵物が存在する土地は、買主にその撤去工事や地盤改良工事を強いることになるので、「隠れた瑕疵」になるので,瑕疵担保免責特約を結んでいても、売主は,買主から地中埋蔵物の存在の可能性を質問された場合は,誠実にこれに関連する事実関係を説明すべき義務があると判示して,この質問に対して,調査もしていなかったのにもかかわらず,地中埋蔵物に関しては問題はないと回答したのは,重大な過失であるとし,民法572条の「瑕疵のあることを知っている」とは,「重大な過失で瑕疵のあることを知らなかった」場合も含むと解されると判示し,売主の瑕疵担保責任を認めました。
 この売主が,買主より,土中にコンクリートがら等の地中埋蔵物が存在するだろうか?と質問されたとき,私は調査していないので知らない,と正直に言っておれば,瑕疵担保免責特約の適用を受けることができたでしょうに。この裁判例は,嘘をついて得することはないという教えでしょう。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ