コラム

 公開日: 2010-12-17 

相続 71 代償分割


1 代償分割の意味
代償分割とは、「債務負担による分割」です。すなわち、遺産分割は、現物を分割するのが原則ですが、現物分割が難しいなどの事情があるとき、相続人の一部の者が現物を取得し、他の相続人には、その現物を取得した相続人が一定の金銭債務を負うという分割方法です。家事審判規則109条は、「家庭裁判所は、特別の事由があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の1人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物をもつてする分割に代えることができる。」との規定を置いていますので、「特別の事由」がある場合に、家庭裁判所は、代償分割ができるのです。

2 特別の事情の要件
大阪高等裁判所昭和54.3.8決定は、家事審判規則109条にいう「特別の事由」があるときとは、
① 相続財産が細分化を不適当とするものであること
② 共同相続人間に代償金支払いの方法によることにつき争いがないこと
③ 当該相続財産の評価額がおおむね共同相続人間で一致していること
④ 相続財産を取得する相続人に債務の支払能力があること
に限られると判示していますが、実務的な感覚としては、もっと緩く、言い換えれば、結構多く代償分割の審判をしている感があります。代償分割は、裁判所が「特別の事由」があると判断すれば、債務を負担させられる相続人の意思に反してもなし得ることなのです。
しかしながら、上記の4要件の内④の資力要件は絶対に必要な要件です。また、代償分割の審判をする場合は、代償金を支払う相続人に資力があることを、審判書の中で明らかにさせることが要求されています。すなわち、最高裁平成12.9.7決定は、「家庭裁判所は,特別の事由があると認めるときは,遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて,現物をもってする分割に代えることができるが(家事審判規則109条),右の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の一人又は数人に金銭債務を負担させるためには,当該相続人にその支払能力があることを要すると解すべきである」と判示し、「高裁(原審)が相続人の1人(抗告人)に対し,高裁のした決定(原決定)確定の日から6箇月以内に,他の相続人(相手方ら)に総額1億8822万円を支払うことを命じたが、この決定の中には、抗告人が金銭の支払能力がある旨の説示はなく,その事件の記録を精査しても,支払能力があることを認めるに足りる事情はうかがわれない。」として、更に審理を尽くさせるため,右部分について事件を原審に差し戻しました。

3 債務は分割でも良いか?
神戸家庭裁判所尼崎支部昭和48.7.31審判は、債務を年5分の利息を付けて5年間で支払う内容にしました。新潟家庭裁判所昭和42.7.31は10年割賦にしました。東京家庭裁判所昭和50.3.10審判は、抵当権付きで、弁済に1年半の猶予を与えています。

この記事を書いたプロ

弁護士法人菊池綜合法律事務所 [ホームページ]

弁護士 菊池捷男

岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL:086-231-3535

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
菊池綜合法律事務所|菊池捷男弁護士は数多くの民事裁判を手がけてきたエキスパート

法律事務所は決して敷居の高い場所ではありません。(1/3)

 事務所設立以来40年、「うそをつかない、ごまかさない」を信念に、離婚や相続など数多くの民事裁判を手がけてきた菊池捷男さん。現在事務所には菊池さんを筆頭に6人の弁護士が在籍し、民事から企業法務まであらゆる法律問題をサポートしています。 ...

菊池捷男プロに相談してみよう!

山陽新聞社 マイベストプロ

あらゆる法律問題に対処可能

事務所名 : 弁護士法人菊池綜合法律事務所
住所 : 岡山県岡山市北区南方1-8-14 [地図]
TEL : 086-231-3535

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

086-231-3535

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
共同保証人間の求償権の趣旨・消滅時効中断事由に関する初判例

最高裁判所平成27年11月19日判決の紹介時系列的事実関係⑴ 信用保証協会Aと主債務者会社の代表取締役Bが、銀...

[ 民法雑学 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(後半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、①医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対す...

[ 労働 ]

労働 時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意の有効性について(前半)

 最高裁判所第二小法廷平成29年7月7日判決は、医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する...

[ 労働 ]

信用保証協会、二度目の最高裁判決

またまた、信用保証協会に不利な最高裁判決が出されました。2016-09-14付けコラムで紹介しました最高裁判所第三小...

[ 会社関係法 ]

立法論としての相続法⑬ 法制審議会で、民法1015条の字句を改めるべしとの意見出る

 現行の民法1015条は、「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しています。この字句から、遺言執行...

[ 相続判例法理 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ